◇ ページ28
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数日後__
「ガヤさん」
「ん？」
「Aのことなんだけど」
俺の言葉に一瞬目が泳ぐ。
周りにいるメンバーに気遣ってか、「場所変えよ」と廊下に出るガヤさんについて行く。
「Aと付き合うことになった」
友達の彼女を好きになるなんて自分には無縁だと思ってたけど、一つ言い訳が出来るなら俺の方が先にAを好きになってた。そこだけは主張させて欲しい。
でも結果として略奪する形になってしまった。
そこは謝るから、
「ごめ「良かったじゃん」
「え？」
「俺のことは気にしなくていいから」
この余裕はどこから生まれてくるんだろう。
Aは本命じゃなかったから？
俺を信頼してのこと？
「…うん、分かった」
ポンッと俺の肩を軽く叩いて楽屋に戻って行ったガヤさんを黙って見つめる。
なんとなく複雑な気持ちが残るけど、これからは俺がAを幸せにすることに変わりはない。
◇
◇
「あ、玉ちゃん、おかえり」
家に帰って数秒したら玄関が開く音がしてAが顔を覗かす。
「順番的にただいまでしょ」
「確かにー！」
そう笑いながら買い物袋をテーブルに置いたAが買ってきたものをテーブルに並べ始めた。
「今日は寒いからシチュー作ろうと思って」
そう言うと手を洗って早速下準備に取り掛かる手際の良さに隣に立って見つめてしまう。
「太輔に話してくれたんだって？」
「え？」
「ほんっと律儀な人だよね」
野菜を炒めるいい匂いが部屋を包んで酔いしれてたらAの一言に我に返る。
「律儀っていうか…」
「太輔も言ってたよ、そういう奴だから余計に憎めないって」
「ガヤさんが？」
「玉ちゃんのそういうところも好きなんだって言っちゃったけどね〜」
それ、ガヤさんに言う？
自分のことを他人のことのように明るく笑い飛ばしてるAはやっぱりぶっ飛んでる。
だけどこの後腐れ無い性格だから俺とガヤさんの関係を壊すこともなかったんだと思う。
ガヤさんに交際宣言してからも俺らの関係は特に変わることなくて今まで通り普通に接してる。
男同士ってそんなものだと言ってしまえばそうかもしれないけど、Aが前に言ってた、俺らは互いに家族みたいな存在だからなのかもしれない__
「出来た！食べよう！」
「美味しそ！」
これからは誰に遠慮することなく、彼女を愛させていただきます。
Fin...
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作者名：珠美 | 作成日時：2023年1月27日 9時
