◇ ページ27
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「いっぱいあるじゃん卵」
いつの間にか真横に来て一緒になって冷蔵庫を覗き込んでるAの近さに一瞬頭がグラつく。
「食べたいなぁ、玉ちゃんの卵焼き」
計算なのか単純に鈍感なのか、警戒心ゼロの笑顔で俺を見つめる。
「そういうとこ」
「ん？」
「彼氏いるのにほんっと悪い子だよね」
ゆっくり顔を近付けると引き寄せ合うように唇を重ねる。
角度を変えて舌を入れればAも答えるように舌を絡ませた。
初めてAに触れて、俺の中で可愛く鳴く彼女からは悔しいくらいにガヤさんの匂いがした。
「猫っていきなりいなくなると寂しいんだよね」
「何の話？」
事を終えたベッドの中で彼女は俺を見上げる。
不思議と罪悪感は無かった。
ガヤさんと付き合ってるという背徳感ってヤツと、今まで何もない健全な二人の関係が変わった不思議な感覚と、ただ単純にAが可愛くて愛おしかった。
「なんでもない、こっちの話」
Aを抱き寄せて柔らかな肌に触れると直接感じる体温が心地良い。
「ふふっ、玉ちゃんって不思議な人だよね」
「Aが言う？それ」
「でもそういうとこも好き」
想定してなかった彼女からのキス。
中毒性のあるまたたびのような彼女が意地悪く微笑む。
「やっぱり私、玉ちゃんのこと諦めなきゃ良かった」
「っ、え？」
「太輔と付き合うって言った時、玉ちゃんがおめでとうって言うから」
「いや、だってそう言うしかないじゃん」
俺も好きだった、なんてそんな後出しじゃんけんみたいなこと出来るはずない。
「玉ちゃんに止めて欲しかったんだけど」
スッと腕の中から抜けたAが素の姿のままベッドの際に腰掛ける。そのシルエットがあまりにも美しすぎてただただ見惚れた。
ガヤさんの友達だった彼女をいつの間にか好きになって、その気持ちに気付いた時には手を出してはいけない存在になってて、きっとこのまま放っとけば彼女はまた飼い主の元へと帰ってしまう__
「A」
ぎゅっと後ろからAを抱きしめて肩に顔を埋める。
「このまま奪ってもいい？」
そんな言葉を口にする日が来るなんて恐ろしくて想像したこともなかった。
苦楽を共にしてきた大事な大事な親友の彼女を今こうして自分のものにしようとしてる。
「私はずっと前からそうして欲しかった」
彼女の言葉が俺の行動を肯定するように背中を押した
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作者名：珠美 | 作成日時：2023年1月27日 9時
