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「Aちゃん」
突然目の前にグイッと差し出された小さな紙袋。
「え、なんですか？！」
「プレゼント、買ったから、あげる」
ロボットなの？って思うくらいに固くてぶきっちょな差し出し方に笑いそうになるのを堪える。
「私に？いいんですか？」
「うん、でもまた違ったら、ごめん」
紙袋の中を覗き込むと可愛くリボン包装された箱が入ってる。
「開けてみてもいいですか？」
「うん」
近くにあった机に置きながらそっと中身を確認する。
「…これは？」
「本気で考えたんだけど、どうかな？」
「どうって、？」
これを候補にしたから本命に渡す前に確認してってこと？
「あぁーうん、いいんじゃないですか？
包装も可愛いし、その子が飴ちゃん好きなら」
「全然意味分かってない？
女の子はみんな知ってるんじゃないの？」
「え、何の話ですか？」
「いや、いいや。
良かったらそれ食べて」
そのままスタジオから出て行ってしまった宮田さんの背中を視線で追ってたら、入れ違うようにタイミングよく藤ヶ谷さんが入ってきた。
「…藤ヶ谷さん、」
「どうした？」
「これ、宮田さんからもらったんですけど、」
「へえー良かったじゃん！
宮田もよく考えたなぁ、褒めてあげてよ！」
渡されたキャンディーを見るなり感心してる藤ヶ谷さんに首を傾げる。
「いやいや、プレゼントに飴ちゃんって小学生じゃないんだから止めてあげた方がいいですよね？！」
「え？ホワイトデーにキャンディーは“あなたが好き”ってことでしょ？」
「えっ？！」
「もしや知らなかった？
うわぁー宮田もこういうパターンは想定してなかっただろうな(笑)」
「本気で考えた、って」
「下手くそだなぁ(笑)
でも相手もこんな鈍感じゃどう考えても伝わらないよね」
「ちょっと宮田さん探してきます…！」
キャンディーの箱を抱えてスタジオを出て宮田さんが向かいそうなところを虱潰しに探していく。
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作者名：珠美 | 作成日時：2023年1月27日 9時
