◇ ページ18
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「お店に忘れ物しちゃって、それを渡しに来てくれて、」
「俺に嘘つけると思う？」
「っ、」
「隠さなきゃならない感じなんだ」
「違くて…！
元彼…大学時代の…」
こんなことになるなら行くんじゃなかった。
気持ち良く帰ってきたのに酔いなんてとっくに覚めてる。
「今も会ってんの？」
「ゼミメンバーで集まればいるけど別に何もないよ」
太輔が静かに怒ってる。
この冷静さが余計に追い詰められてる気持ちになる。
「ミツくん、声かけてくれたら良かったのに」
そんなこと立場的にも出来るはずがないのについ恨み言を言ってしまう。
「声かけたら紹介してくれたの？」
「え？」
「彼氏の友達です、って」
「する！していいなら元彼に限らずみんなにする！」
そんなの当たり前じゃん！
太輔が彼氏なんてこの上ない幸せなことなのに隠しておく理由があるとすれば、それはアイドルだから。
「…ごめん、不安になった」
ぎゅっと抱きしめられて太輔の温かい体温に包まれる。
初めて聞いた、太輔の自信なさげな声。
「大丈夫だよ、太輔以外になびくわけないじゃん」
「俺ダサいよな、こんな些細なことでめっちゃ考え込んでたわ。
宏光からの連絡見て手が震えたもん」
いつも余裕の太輔が珍しい。
�犢イ��瓩箸��牋Δ靴討覘瓩覆鵑童斥佞垢蕕△泙蠍�にしないのに。
「やきもち？」
ちょっと嬉しくなって、顔を覗き込みながら意地悪く聞いてみる。
「っ、そうだよ…余裕なくて悪かったな」
「全然、むしろ嬉しい」
今日の太輔には心がくすぐったくなる。
なんとも言えない甘い気持ちに酔いしれたくて、ぎゅっと太輔を抱きしめ返した。
「あ、そういえばごめん、スマホ」
「あぁ、LINEかな？誰だろ」
太輔の目の前でLINEを確認したら元彼から“今度は二人で飲みに行こう”という誘い。
「…はい、ブロック」
「え？」
「え？」
「そこまでする？！」
「集まる時はグループLINEがあるからいいの」
こんな一面が見られるならまた嫉妬して欲しいなんて思うけど、太輔が不安になることはしたくない。
それは太輔が私にしてくれてるのと同じことだから。
私は今の幸せを守っていきたい__
＊
「ミツくんはあそこで何してたんだろう」
「家あの辺りだよ」
「え、そうなの？！」
「ミツも悪いよなぁ、わざわざ告げ口してくるんだから」
「でも太輔が嫉妬してくれたから私は嬉しいよ？」
Fin...
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作者名：珠美 | 作成日時：2023年1月27日 9時
