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「ふぅー」
プライベートで嫌なことがあるとつい仕事に集中したくなるのが私の悪い癖。気付けば終電に駆け込む始末だ。
あぁー、今日どんな顔して帰ったらいいんだろう。
昨日は気まずい空気のまま寝てしまったし、今朝起きた時にはもう宏光の姿はなかったから会話なんてしてない。
私ばかりが我慢するくらいなら、正直もうこのまま別れてもいいのかなって思ったり…
まぁそもそも宏光が帰ってくるのかも分からないけど。
…なんて電車に揺られながら考え込む。
「ただいま…」
玄関に入って真っ暗な部屋に小さく呟く。
明日も変わらず朝から出社だし、クタクタで食欲もないからシャワーだけ浴びて寝ようと思っていたら、
「A」
「っ、わっ！びっくりした…！」
寝室の扉が開いて宏光が顔を出した。
「帰ってたんだ…」
「うん」
昨日のことがあったから、気まずくないようにいつも通りを装う。
「冷蔵庫のきんぴらと肉豆腐食べちゃった」
「あ、うん、いいよ全然」
宏光の顔が見れない。
昨日のショックが大きかったのもあるし、私の中で溢れ出た我慢が消化しきれてないから__
「…これは？」
カバンの中から取り出した小さな箱をテーブルに置くと宏光がすぐに反応した。
「同期の青山くんからもらったの」
�爐�ん�疉佞韻垢譴价砲世辰栃�かる。
私なりの精一杯の仕返しだ。
「A、」
「…なに」
いろいろな感情を我慢して、頭を過る別れを自分の中に落とし込もうと下を向いていると、首に冷たい感触が伝わってきた。
「ちゃんと言葉に出来なくてごめん」
ふと自分の首を見ると誕生石が小さくついているネックレスがかかっていた。
「これは…？」
「言い訳になるかもしれないけど、何ヶ月も前から用意はしてたんだ。でもいざ当日になったら忘れるっていう、まじでごめん…！」
嬉しさと共に目の前で深々と頭を下げてる姿を見たら笑みが溢れずにはいられなかった。
「…ありがとう、大切にするね」
「許してくれるの？」
「だって好きだもん」
そう言った瞬間にガバッと力強く包み込まれた。
「良かったぁ…今日帰ってこなかったらまじでどうしようかと思った…」
「ふふ、大袈裟だよ」
「次の休みにお祝いさせて」
「うん、ありがとう」
「本当に、Aのこと好きだから、俺から離れないでよ」
顔を上げれば顔を赤くした宏光の表情に吸い込まれるようにして唇を重ねた__
Fin...
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作者名：珠美 | 作成日時：2023年1月27日 9時
