One more chance..Ki ページ1
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「ごめん、忘れてた…」
事の発端は彼の一言だった__
「深夜の仕事が続いてたから日付の感覚狂ってた」
�犹纏���
そう言えばこっちは何も言い返せない、最高の言い訳だよね、なんて思ってしまう自分が一番嫌い。
「記念日は覚えてなくてもいいけどさ、誕生日くらいは、」
「だからごめんって！」
「っ…、」
分かってる。
忙しいことも、仕事で疲れてることも、イベント事とか大事な日に予定を合わせられないことも、全部全部分かってて付き合ってきた。
それでも一言でいいから誕生日当日に「おめでとう」って言って欲しかった。それって欲張りなことなのかな。
「もう、いや…」
ずっと前から少しずつ大きくなりつつあったものが一気に溢れ出た瞬間だった__
◇
◇
「A、」
「…え、なに、これ？」
「昨日誕生日だったじゃん」
出勤してすぐパソコンに向かってたら、「はい」とデスクに置かれたリボン付きの小さな箱が視界に入ってきた。
誰もが見たことのある高級チョコレートのパッケージに驚いて振り向けば同期の青山くんが笑ってる。
「いいの？わざわざありがとう！」
「…何かあった？」
「え？」
「いや、なんか顔が、」
「え、あ、昨日泣いたからかな…」
恥ずかしくて咄嗟に俯く。
たくさんいる同期の中で青山くんは唯一同じ部署に配属されて、仕事のこともプライベートのことも割と何でも話せる仲。
「忙しいのは分かるけどさ、彼女の誕生日忘れるなんてことある？！」
オフィスのオープンカフェでつい大きくなる声。
「男性って女性が思ってる以上に器用じゃないっていうか、何かに集中してる時は他のこと考えられなかったりするんだよね」
青山くんは決して悪くは言わない。
いつも穏やかで優しい。
「俺も彼女によく怒られたりするし」
困り顔で笑う青山くんにつられて笑う。
「…やっと笑った」
「え？」
「Aの落ち込んだ顔見てるとこっちまで調子狂うからさ」
「あ、ごめん…」
「いいよ、また何かあったら話聞くから」
「先戻ってるね」って微笑んだ青山くんが爽やかすぎて、思わず見惚れてしまう。
宏光と付き合ってなかったら、きっと好きになってたかもしれない__
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作者名：珠美 | 作成日時：2023年1月27日 9時
