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気付くと俺は車を降りて、彼女の方へと向かって歩いてた。
自分でもなぜそうしたのかわからない。
……でも、もう戻れない。
スマホを見てる彼女。
真っ暗なここで、画面の光だけが彼女の顔を照らす。
なんて声を掛けようかと迷ってた時、ふとタイミング良く顔を上げた彼女が俺に気付いた。
「……あっ。」
玉「…こんばんは……」
「こんばんは…！
先ほどはありがとうございました。」
咄嗟にスマホをカバンにしまって、俺に頭を下げる彼女の律儀さに思わず恐縮する。
「…あれ、こんな時間まで……？」
「実はニカが…あ、メンバーの1人が、ワイヤレスイヤホンを落としたみたいで。今の今まで探してもらってたんです。」
「えっ！？そうだったんですか？座席にですか？
確認したけど気付かなかった…。ごめんなさい。」
「あっ！いえ！いいんです！
今さっき見つかったって連絡があってマネージャーが取りに行ってるんで。」
「そうですか。それは良かった！」
手を胸に当てながらホッと胸を撫で下ろした彼女が笑顔を見せる。
「…あのー、今帰りですか？」
「はい。
この時間はもう電車がないのでタクシー待ちです。」
「あ、遅くまで大変ですね。」
俺の性格的に気の利いた会話ができるわけもないのに、なんで俺はまた彼女に話しかけてしまったんだろう。
ここにミツがいれば……
いや、宮田でもいい。
もっとスムーズな会話ができるのに、人見知りの俺は自己嫌悪に陥る。
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作者名：珠美 | 作成日時：2021年6月18日 8時
