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「…あ、お手洗いですか?」
「…っ、はい」
カーテンで仕切られた向こう側からちょうど出てきたAさんと鉢合わせになる。
「こちらです」と案内してくれた先で、クルッと俺の方を振り返った彼女。
初めて見た、ばつ悪そうな顔してる。
「…申し訳ありません。
今他のお客様が使用中なので、空きましたらお呼びします。」
「…あ、いいですよ。ここで待ってます。」
「えっ、でも…、」
わざわざ呼んでもらうのもあれだし。
…あ、もしかしてここで待つ方が迷惑なのかな?
「あ、あの、他のお客様の目もあるかなって思ったんですけど……大丈夫ですか?」
あぁーなるほど。
このファーストクラスに俺ら以外はサラリーマンしかいないし、後ろの席とはカーテンで仕切られてて他の目はないし。
「全然大丈夫です!」
「そうですか!良かった。」
微笑んだ彼女の笑顔を直視できなくて、とりあえず目の前の画面に目を泳がせる。
へえー。
改めて見ると、機内って色んなスイッチがあったり、消化器みたいなのまである。
「……気になりますか?」
「あっ、いや。
飛行機の中ってちゃんと見たことなかったんで…」
「そうですよね。
特に国内線の移動はあっという間ですもんね。」
「…海外にも行くんですか?」
「はい。私は国際線がメインなんです。」
「えっ、じゃあ英語話せる…?」
「ふふっ。それよく言われるんですけどね。
私は日常会話程度です。英語は苦手で……」
苦手……
きっとそれはただの謙遜で、日常会話程度っていうのも俺からしたらハイレベルだと思う。
「あの…、」
よくある質問ついでに、ド素人目線の質問をもう1つ。
「名刺って本当に渡されるんですか?」って聞こうとしたら、
「…あっ!空きました。
すぐお掃除してきますね!」
出てきたお客さんと入れ違いにトイレに入ってしまった。
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作者名:珠美 | 作成日時:2021年6月18日 8時