空で出逢ったキミ。 (ページ34)

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お仲間がイヤホンを落としたとかで、お待ちになってるということで……

お客様が全員降りた後に座席周辺調べたんだけどな。

全然気付かなかった……。

「…あのー、今帰りですか？」

「え？…あ、はい。」

玉森くんの質問に、家まで送ってくれるおじさん待ちです、なんて口が裂けても言えないから、

「この時間はもう電車がないのでタクシー待ちです。」

なんて嘘をつく。

「あ、遅くまで大変ですね。」

…なんてお優しい。

でもお客様に嘘をついた最低な私には、あなたの心遣いに胸が痛む。

ふと遠くを見ると、こちらに向かって走ってくる人影が見える。

「…あ、あの方、」

「ーー？」

「…マネージャーさん、ですか？」

夜でも蒸してるこの季節。

あんなに走って汗かかないのかな。

飛行機の移動とはいえ疲れるし、これからメンバーを送るマネージャーさんも大変だなぁ。

カバンの中でブルッと震えたスマホ。

……あ、山崎さんかも。

そろそろ玉森くんともお別れ。

こんなにちゃんと芸能人のお客様と話したの初めてだった。

「これからも体に気を付けて頑張ってくださいね！」

マネージャーと一緒に車に戻るであろう玉森くんに言葉をかける。

これはCAの私からではなく、1人の人として伝えたかった。

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