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カランという乾いた音を立て、賽銭箱の中に4人が投げた賽銭が転がる。

おそらく本来の目的を忘れているであろう菜緒は、多少身を乗り出して食い気味に他3人に聞く。


「ねえねえ!みんなは何祈った?あと、賽銭いくらだった!?私は5円!」

褒められたことでないことを堂々というのが菜緒の性分だ。

全く呆けた質問に、慎吾は思わず顔を顰めてしまう。

だが、ここで無視するのも悪い、と常人にはなかなか出ない面倒見の良さで応える。

「賽銭は105円。願い事は秘密。」


慎吾の言葉にあ、秘密にしてもいいんだ、という雰囲気で楓も話し出す。

「私も秘密かな……ごめんね。賽銭は132円。なんとなくだけどね。」

このように律儀に謝る真面目さがゆえ、生徒会書記も任されるのだろうとそばで見ていた慎吾は思う。



一番最後に、気が進まなさそうにしながらも湊が話す。

「願い事はそもそもしていない。賽銭は財布の中身を適当に掴んだだけだ。83円。」


「へえ……」

自分から聞いた割には、反応が薄い菜緒。

聞きたかった本命は願い事の方だったのだろう。

調子のいい奴とでも思っているのだろうか。慎吾は菜緒をからかいだす。

「それにしても、5円はないだろ、5円は。神さまに失礼じゃね?」

「いいの!ご縁だから!」



ほら!と財布に残っていた小銭の中から5円を探し、高く掲げる菜緒。

その時、いきなり強風が吹く。

その時の風が生ぬるかったのは、夏の気候のせいか、はたまた噂のせいか。

どちらにしろ、不吉である。

菜緒は持っていた五円を落としてしまう。

風の流れに乗り、コロコロと転がって行く五円を菜緒は追いかける。


ようやく小銭が止まり、それを持って皆の元に戻る。

「フーッ!やれやれ、すっごく転がっていったから追いかけるの大変だったよ〜!」

手のひらに乗っている軽く汚れた5円をチラッと見る湊。

次の瞬間、その目は大きく見開かれる。


「おい、これ…」

「ん?これがどうかしたの?」


指でメガネを押し上げながら、慎重に喉の奥から声を出す。

「いいか、お前ら、よく聞け。この金にある元号、あり得ないぞ。」





驚いた3人は次々に菜緒の手の中を覗き込む。



そこに書いてあった年号は、














「昭和、七十四年__________?』

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設定タグ:都市伝説 , 青春 , ミステリー   
作品ジャンル:ミステリー, オリジナル作品
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北条ひかり(プロフ) - 水無月歌乃@絵師さん» 褒めていただき、うれしいです!これからもよろしくお願いします! (2022年8月10日 23時) (レス) id: 690716307d (このIDを非表示/違反報告)
水無月歌乃@絵師(プロフ) - 冒頭から世界観に引き込まれました。とても素敵なお話ですね! (2022年8月10日 23時) (レス) @page2 id: bff6de7ecd (このIDを非表示/違反報告)
北条ひかり(プロフ) - 朱まぐさん» ありがとうございます!こちらも、更新頑張ります! (2022年8月5日 18時) (レス) @page8 id: 98e6601380 (このIDを非表示/違反報告)
朱まぐ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。主人公達のやり取りが面白くて読んでいて楽しかったです!最新話に出てきた狐の正体や少女が言っていた言葉の意味などもとても気になります。無理せず作者さまのペースで頑張ってください! (2022年8月5日 17時) (レス) @page3 id: 36aa4bf6d2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:北条ひかり | 作者ホームページ:Honon  
作成日時:2022年8月3日 11時

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