Al Suhail al Wazn

＊ ページ6

.


「…それは普通だよね、」

「スマホは毎日除菌シートで拭くし」

「分かる！菌だらけだし…あ、吊革は？」

「あー…どうしてもって時は捕まりますけど、降りたら即便所に行って手洗いますね」

「階段とかエスカレーターの手摺り…」

「え？絶対触んないですよ、あんなとこ」

「……じゃあ、外食してる時にスプーンとかフォークを紙ナプキンで拭いたりとかは…」

「それはないですね」

「…あ、そう」



消毒されてるんだから綺麗でしょ、って。いやいや、甘いよ二階堂くん。口に入れるところを手掴みで触る人だっているからね？

学生の時ファミレスでバイトしてたけど、パートさんがスプーンの柄じゃない方を掴んでるのを見た時はゾッとした。その手でさっき、お会計してたよね？って。思えばあれは、私の潔癖をさらに酷くさせた出来事だった。



「…話逸れてません？」

「え？……あ、ごめん」

「とにかく、俺も潔癖なんで。そこに関してはむしろ好条件なんじゃないですか？」

「…好条件って、」

「恋愛にも大きく関わってきますよね」

「……それは、まぁ…」

「彼女の家に上がる時、使い捨ての靴下持っていったらめちゃくちゃキレられたり」

「……」

「食べ掛けもアウト。1口ちょうだい？とか可愛く言われても無理なもんは無理だし」

「…分かる、」

「あと俺、家に誰か上げるのも嫌なんですよね。よっぽど仲いい友達か家族ならまだいいけど、他人は基本上げたくなくて…」

「めっちゃ分かる」

「…で、実際家上げるってなった時は、風呂場で足だけ洗ってもらうようにしてて」

「えっ、足洗わせるの？！」

「はい…って、そこ食い付きます？さっきからどんどん潔癖トークみたいになってますけど、それってもしかしてわざと？」

「あ…いや、そうじゃなくて…」

「……」

「足洗ってもらうの、いい案だなって」

「…え、」

「……」

「共感してもらえたの初だわ…」



そう言って、照れ臭そうに口元を緩ませる二階堂くん。･････可愛い、かも。



「あと、束縛…ですよね？」

「…うん、」

「俺は束縛とか絶対しないし、されたらもうそこで終わりですよ。気持ち冷めちゃうし 」

「…そう、なの？」

「てか、歳下だからそうとは限らないし」

「……」

「そもそも、相手を信頼してないから束縛するんですよね？常に疑われてるとか、そんなの普通にムカつきません？」

「……」



･･･あぁ、どうしよう。

さっきから私、共感しかしてない。

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す