Al Suhail al Wazn

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この日をきっかけに、二階堂くんとは定期的に飲みに行く仲になった。最初はどちらかが誘う形だったけど、回数を重ねる毎に、どちらからともなくといった感じになって。最近ではもう、言葉がなくても目が合うと分かる。あ、誘われてる、って。

頻度はまちまち。平均で言えば週1、多い時は週2のペース。もう数え切れないくらい行ってるのに、話題は尽きないし、帰り際はいつも時間が惜しくなる。

帰りが遅くなると、二階堂くんは必ず「送ります」って言うんだけど、私はそれを毎回断る。だって、後輩に家まで送ってもらうなんて変じゃない？

もしも二階堂くんが私の先輩だったら、最終的にはお言葉に甘えて、送ってもらうかもしれないけど。そんなことで気を遣われたくないし、なんていうか、二階堂くんとは、対等な関係でいたい。


それにしても、不思議だ。

あの日は本当に、なんとなく誘っただけなのに。そもそも職場の人とは、先輩後輩関係なく、性別も関係なく、同期とでも付かず離れずの関係を保ってきた。そんな私が、1人の後輩とこうやって 仕事終わりに頻繁に飲みに行くなんて。

自分のことなのに、どこか他人事みたい。後輩だけど、ただの後輩とは違う気がする。友達？･･･いや、それはない。でも、仕事仲間って言葉が1番しっくりくるようで、やっぱりちょっと違うんだよね。

多分、ちょっとだけ特別なんだろうな。だって、仕事関係の人とここまで仲良くなるなんて初めてのことだし。仕事終わりに二階堂くんと話してる時は、びっくりするくらい素でいられるんだもん。


･･･だからかな。

あまりにも二階堂くんといる時間が心地よすぎて、全く気が付かなかった。





「好きです」



いつも通り、駅までの夜道を並んで歩いていたら、ふと隣に二階堂くんがいないことに気付いて、振り向いたら、二階堂くんがいつになく真剣な面持ちで私を見ていた。そして、言われた一言は予想外のもので。

どんな感情よりも、驚きが大きかった。何か言わなきゃって思えば思うほど、何も考えられなくなる。



「……全然気付かなかった、」



思わずそう呟くと、二階堂くんは私を見つめたまま、静かに口を開いた。



「だって、出さないようにしてたから…」

「……」

「あからさまに態度に出したら、きっとAさん困るだろうなって……だから出さないように努力してました」



そう言ってから、二階堂くんはまた視線を落として、黙り込んでしまった。

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