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・・・違うよ、高嗣。
私よりも、高嗣の方が泣きそうだから。そうやって、怒ってくれるから。だから、もういいやって吹っ切れてる。私には高嗣がいるって、味方でいてくれるって。そう思えるから、心が軽くなるの。
「……ごめん、」
「…え?」
「Aが弱ってる時にこんなこと言うなんて、めちゃくちゃズルいって分かってる」
「……」
「…けど、言ってもいい?」
「……ダメ」
「……言うと思った、」
「……」
「…でも、ごめん。やっぱ言わせて」
「………言うと思った、」
「……真似すんなよ」
「……そっちこそ、」
そう返せば、高嗣が堪え切れないといった様子で吹き出したから、私も釣られて笑ってしまう。高嗣がそうやって聞いてくる時って、聞いてきたくせに、結局言いたいから言っちゃうの。
なのに、いつもいつも、「いい?」って、恰も私に許しを乞うように聞いてくる。
そんなやり取りが、すごく好きだった。
どうでもいいことで喧嘩して。その度に仲直りして、笑い合って。高嗣の言動にいちいち、喜んだり、傷付いたり、怒ったり、泣いたりして。だけど、傍にいられるだけで幸せだった。あの頃の私は、どうしてそんな単純なことに気付かなかったんだろう。
「…周りの環境が変わって、交友関係とかも変わったし、考え方とか好みも変わったけど。Aに対する気持ちだけは、ずっと変わらなかった。Aに会いたくて会いたくて、仕方なかった」
「……」
「5年後とか10年後とかになったら、今の自分もガキだったなぁって思うんだろうけど……俺、あの頃よりは大人になったよ」
「……」
「もう、あの頃みたいに自分本位な考えでAを傷付けたり泣かせたりしないし、Aが悲しい時や辛い時、絶対傍にいる」
「……」
「……だから、」
「A!」
高嗣の言葉を遮るように、一際大きく響いた声。目を丸くして私の背後に視線を向けた高嗣が、悲しげに私を見つめてくる。
そのまま馬鹿みたいに立ち尽くしてたら、後ろからものすごい勢いで抱き竦められた。
「…っ、」
「……なんで電話出ねぇんだよ」
「……」
「……なぁ、」
服越しに伝わってくる体温。荒く乱れた呼吸。宏光がここまでどれだけ必死に走ってきてくれたのか、どれだけ心配してくれたのか。聞かなくても分かるくらいで。
さっきの電話はなんだったのか、なんで元カノが一緒だって黙ってたのか。そんなことはもう、どうでもよかった。
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nanaco(プロフ) - 桃マスカットさん» こんばんは( *´艸`)💚(絵文字使えるようになったことを忘れてた←) ですよね、後輩二階堂くんめちゃ可愛いですよね…😭✨コメントありがとうございました ( *´꒳`*) (2021年12月22日 23時) (レス) id: ad35a9ba49 (このIDを非表示/違反報告)
桃マスカット(プロフ) - 今回の後輩二階堂くんもめっちゃ可愛かったですー💚こんな後輩に懐かれたいです(*≧艸≦) (2021年12月22日 14時) (レス) id: 21ddaf22cf (このIDを非表示/違反報告)
nanaco(プロフ) - ばーばぱぱさん» ばーばぱぱさん、コメントありがとうございます♪ そう言って頂けて嬉しいです(*^^*) (2021年9月18日 9時) (レス) id: ad35a9ba49 (このIDを非表示/違反報告)
ばーばぱぱ - なんか、、、 癒されるううう(♭・~・) (2021年9月16日 16時) (レス) id: c74ffed917 (このIDを非表示/違反報告)
nanaco(プロフ) - nokkoさん» nokkoさん、初コメありがとうございます♪ えぇっ、泣かせてしまってすみません(;;)笑 そうなんです…最初はくっつけるつもりだったんですが、気付いたらこのような結末に…番組とは違いハピエンにしたかったのに、結局こうなりました (;_;) いい男ですね…高嗣くん… (2021年8月29日 11時) (レス) id: ad35a9ba49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nanaco | 作成日時:2021年7月1日 19時