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「言ってよ…」
「え?」
「っ、言ってくれないと分かんないよ……そりゃあ、親にも先生にも言われたよ?地元がいいなら他にもいくつか候補があるって、Aならもっと上いけるのにって!でも私は……高嗣と離れたくなかったから…」
「……」
高嗣が、小さく息を呑んだ。・・・ねぇ、もしかして私達、お互いに気付いてなかっただけで、ずっとすれ違ってたのかな。
どーん、って花火が上がる音と、それに湧く人々の大きな歓声。その全てから、私と高嗣がいるこの空間だけが切り離されたような、そんな不思議な感覚に一瞬戸惑う。
「あの時……高嗣の迷惑そうな顔を見て、そう思ってたのは私だけなんだって、私の気持ちと高嗣の気持ちは同じじゃないんだって、すごくショックだった。だから…」
「だから……地元を離れた?」
「……」
「俺が、Aを傷付けたから?」
「……止めてくれるかなって、ちょっとだけ期待してたんだよ。離れたくないって、そう言ってくれたらやめようって…」
「……俺だってショックだったよ、」
「……」
「神戸の高校受けるって……Aが俺から離れようとしてるって、頭が真っ白になった。さっきAが言ってたみたいに、俺の気持ちとAの気持ちは違うんだって」
「……行くな、って言ってほしかった。高嗣がそんな風に思ってくれてたなんて……知ってたら私…高嗣から離れたりなんかしなかった……高嗣と一緒にいた…っ、」
「……」
「っ、やだ……離して、」
「離さない」
「……」
「1回離して死ぬほど後悔したから……次会ったら、絶対離さないって決めてた」
「……」
背中に回った腕は、あの頃よりもずっと、逞しくて、力強くて。その力強さだけ、高嗣の気持ちが、痛いほどに伝わってくる。
「…成人式の時、会えるって思ってたのにどこにもいなくて。俺ら、別れ話もしてないじゃん?あぁこれ自然消滅ってやつか、って気付いた時にはもう卒業して数ヶ月経った頃でさ……俺に会いたくなくて来なかったのかなって、ちょっと思ってたんだよね」
「…そんなわけないじゃん、」
「……バイトのヘルプで成人式蹴るとかさ、どんだけお人好しなの?マジ有り得ない」
「…ごめん、」
「でも、Aらしいよね」
「……」
「……そういう、バカみたいにお人好しなとこも可愛くて、めちゃくちゃ好きだった」
「…やめてよ、」
「今も変わってない、ずっとAのこと」
「やだ、聞きたくない…!」
「聞けって」
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nanaco(プロフ) - 桃マスカットさん» こんばんは( *´艸`)💚(絵文字使えるようになったことを忘れてた←) ですよね、後輩二階堂くんめちゃ可愛いですよね…😭✨コメントありがとうございました ( *´꒳`*) (2021年12月22日 23時) (レス) id: ad35a9ba49 (このIDを非表示/違反報告)
桃マスカット(プロフ) - 今回の後輩二階堂くんもめっちゃ可愛かったですー💚こんな後輩に懐かれたいです(*≧艸≦) (2021年12月22日 14時) (レス) id: 21ddaf22cf (このIDを非表示/違反報告)
nanaco(プロフ) - ばーばぱぱさん» ばーばぱぱさん、コメントありがとうございます♪ そう言って頂けて嬉しいです(*^^*) (2021年9月18日 9時) (レス) id: ad35a9ba49 (このIDを非表示/違反報告)
ばーばぱぱ - なんか、、、 癒されるううう(♭・~・) (2021年9月16日 16時) (レス) id: c74ffed917 (このIDを非表示/違反報告)
nanaco(プロフ) - nokkoさん» nokkoさん、初コメありがとうございます♪ えぇっ、泣かせてしまってすみません(;;)笑 そうなんです…最初はくっつけるつもりだったんですが、気付いたらこのような結末に…番組とは違いハピエンにしたかったのに、結局こうなりました (;_;) いい男ですね…高嗣くん… (2021年8月29日 11時) (レス) id: ad35a9ba49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nanaco | 作成日時:2021年7月1日 19時