Chocolate Sling -4-

9 ページ16

.


『……さすがに寝てるよな、』




最寄り駅を出て、自宅までとぼとぼと歩きながら なんとなく独り言を呟いた。




時刻は午前0時をとっくに過ぎている。




積もる話が多すぎて、時間が過ぎるのが びっくりするほどあっという間だった。




それこそ、あんなに長く居酒屋に居座ったのは初めてなんじゃないかってくらい (笑)




お互いの近況についてはもちろん、元同級生と街中で偶然会っただとか、この場にはいない共通の知り合いの話でも盛り上がった。




中でも1番驚いたのは、サッカー部の後輩だった奴が 一昨年結婚していたことだった。




そこからは自然と恋愛の話になって、隠す必要もないだろうと正直に打ち明けてみれば、そこからはもう、怒涛の質問攻め。




会社の同期で、歳は4つ下。




綺麗系か可愛い系かで言うと、可愛い系。




"4つ下ってマジ？"




"宏光が社内恋愛とか意外だわ〜(笑)"




俺が答える度にいちいち騒ぎ出すから、きっと隣のテーブルには丸聞こえだったと思う。




渋々2人で撮った写真を見せれば、「へぇ、普通に可愛いじゃん！」なんて言われた。




思わず、「は？普通ってなんだよ、めっちゃ可愛いわ！」と我ながらとんでもない返しをしてしまい、解散する直前まで、延々と揶揄われる羽目になった。




酔っ払い特有のウザ絡みってやつだ。




面倒だったけど、なんだかんだで楽しかったし、また近いうちに集まれたらいいな。




.




『ただいまー…』




出来る限り音を立てないよう、そっと鍵を開け、ドアを閉める時も細心の注意を払った。




･････あれ？




くるりと振り返って、動きを止める。




リビングが明るい。




なんでだ、Aは寝てるはず。




アルコールでふわふわとした思考をなんとか働かせ、まだAが起きているかもしれない、と慌てて革靴を脱いで中へと急ぐ。




『おわっ、』




足が縺れて、派手に転んでしまった。




床に膝を打ち付けた音は、下手したら下の階や隣に住む住人にも聞こえたんじゃないかってくらい、それはもう大きく響いた。




___ガチャッ




「宏光っ、どうしたの？！」




『あ……いや、ちょっと転んだだけ。』




いい歳して 何もないとこで派手に転けるなんて、さすがに恥ずかしすぎる。




なんとなく顔を上げられずにいると、




「飲みすぎないでねって今朝言ったのに…」




ふわり、とシャンプーのいい匂いがして、Aがすぐ傍まで来たのが分かった。

続く お気に入り登録で更新チェックしよう!

最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している


←8

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す