Torenia Fournieri -2-

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パタン、とドアが閉まった。




その音さえも、なんだか緊張を煽る。




『……。』




「…寝顔なんていつ撮ったの、」




自分でも驚くくらい、低い声が出た。




昔からの癖、みたいなものだ。




緊張すると、声が低くなる。




怒ってるの？って誤解させてしまうから、出来るだけ気を付けてたのに。




ニカちゃんの前で緊張なんてしたことがないから、それを今出来ないでいる。




『……前、一緒に昼寝した時。』




「昼寝…」




･･･あの時か、思い出した。




隣に座ってゲームしてて、目が疲れたからって横になったら、うっかり寝ちゃって･･･




目覚めたら、ニカちゃんも隣で寝てた。




「……消してよ、」




『やだ。』




即答された。




「は？消してって。」




『なんで？』




元はと言えば、本人の許可なく寝顔を隠し撮りしたニカちゃんが悪いのに･･･




どうしてそんなに不機嫌なのよ。




「誰かに見られるのは困る。」




『見れないように気を付ける。』




気を付ける･･･？




いやいやいや、無理でしょ。




「見られてるじゃん、千賀くんに。」




『……。』




口籠るニカちゃんに、さらに畳み掛ける。




「幼馴染だからってさすがに隠し撮りは良くないよ？起きてる時に、撮るよって言われたらもちろんいいけど。」




『……幼馴染、だから？』




「え？」




『じゃあAは、幼馴染だから隣で安心して寝ちゃったりするわけ？』




「……。」




急に声色が変わった。




すごく、低い声。




その眼差しも表情も、いつものおバカでお調子者のニカちゃんじゃなくて。




『……ふと隣見たら めちゃくちゃ気持ち良さそうに寝てんの。なんっの警戒心もなく、スカートとか胸元とかはだけててさ？』




「…いや、ちょ、」




もしかして、怒ってる？




『ゲームオーバーになるわ、起こそうにも起こせないわ、挙げ句の果てに寝返り打ったと思ったら無防備な寝顔見せつけて…』




「なっ、見せつけてなんかない！！」




『見せつけてたわ！！俺がどんだけ理性抑えんのに必死だったか！！！』




「…っ、」




瞬間、心の奥底で閉じ込めていた想いが、一瞬で溢れ出した。




こんな風に気持ちをぶつけられたことも、苦しげに見つめられたことも、一度だってない。




理性って何よ･･･




そんなもの、必要ある？




ニカちゃんにとって、私はただの幼馴染なんじゃなかったの？

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