Chocolate Sling -2-

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会場に着いてから、人の流れに逆らうように 奥へと進んでいく。




花火の打ち上げが終わり、ほとんどのお客さんが帰ろうとしているようだ。




"お掛けになった電話は…"




何度も耳にしたアナウンス。




Aはいつも充電をこまめにしているタイプだから、多分 電池が切れたんじゃなくて･･･




「…っ、」




俺にラインを送った後、電源を切ったんだ。




はぐれても連絡一つさえ寄越さない俺に、Aは何を思った･･･？




嫌な予感が脳裏を過り、早く見つけないと･･･と再び足を踏み出したその時だった。




俺とは反対側を、逆方向に歩いていくAの姿を見つけた。




「っ、A…良かっ……」




瞬間、サーッと血の気が引いていく。




人の流れを避けて道の端を歩いているAの隣に、寄り添う1人の男･･･




「………A、」




情けないほど弱々しい声が、周りの雑音に掻き消されていく。




隣にいる奴、誰？




Aと変わらない背丈に、明るめの髪色、何もかもが俺と正反対の見た目。




だけど･･･




Aを見つめるその表情は、俺と同じ。




どこかで安心していた。




飾らない俺を知っても、Aは当たり前のように そばにいてくれる。




離れていくわけがないって･･･




「……嫌…だ、」




A･･･？




なんで、そいつと一緒にいるの。




なんで 俺からの連絡に気付かないの。




なんで･･･どうして･････




行き場のない感情が、膨れ上がって、パーンと弾けたように溢れる。




「A…っ、」




人混みを掻き分けるように、ずっと先にいる大切な人に向かって歩き出す。




「おいっ、痛ぇだろうが！」




強面のおじさんにギロリと睨まれた。




「きゃ、ちょっと何？押さないでよ！」




「マジ最悪なんだけど…」




ギャルのお姉さん達が、周りの迷惑も考えずに自分勝手に動く俺を不快そうに見ている。




「A……Aっ、」




タクシーから降りて走ってきたから、喉はカラカラで、上手く声が出ない。




閉場を告げるアナウンスと周りのざわめきが、俺の声を飲み込んでいく。




「っ、……A！！」




人目もはばからずに、叫んでいた。




立ち止まるAを心配そうに見つめる視線が、Aを捕え、そしてゆっくりと･･･




「…っ、」




一瞬だけ俺に向けられたその瞳は。




強い、独占欲の塊だった。







ーfinー

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