Torenia Fournieri -1-

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あの日いた男子メンバーの顔は、正直全然覚えてなんかなくて。




「……。」




クシャッと満面の笑みを浮かべて写真に写ってる二階堂くんに、心臓がギュッてなる。




『もしかしたら気付いてくれてるかなって、ちょっと期待してたんだよ？』




画面を私に向けたまま差し出されたスマホには、あの日の女子メンバーの写真が写っている。




「え、これ…」




『思わず2度見したもん。普通思わないでしょ？ただの店員とお客さんとしてじゃなく会えるなんて。』




･･･今気付いたけど、二階堂くんの顔が耳まで真っ赤に染まってる。




『行かなきゃ…って思った。じゃないと俺、一生後悔するんじゃないかって…』




「……。」




『初めてお姉さんのことを見た時、心臓のあたりがギューッてなったの。』




そう言って、右胸のところを両手で抑える




「…ふふっ、」




『…なんで笑うの？』




「二階堂くんって、そこに心臓あるの？」




『……。』




スーッと左胸に両手を移動させる二階堂くんを見て、なんだかもう色んな感情が込み上げてきた。




「ふ…っ、もう…二階堂くんって天然なのかバカなのか分かんないんだけど…」




泣きながら笑う私に、




『えっ？！ちょ…ちょっと、笑うか泣くかどっちかにしてよ……』




困惑の表情を浮かべながらも、私の頭に手を添えて、ゆっくりと引き寄せる。




おかげで私の目元は、二階堂くんのTシャツの肩口に押し付けられた。




『…頼むから、もう泣かないで。』




泣かせてるのは君だよ、二階堂くん。




･･･なんて心の中で嫌味を言ってみるけど、それを口に出すのはやめた。




二階堂くんの腕の中があまりにも暖かくて、私の頭を撫でる手があまりにも優しかったから。




『それと……信じられないかもしんないけどさ、俺のこと信じてよ。』




「…信じていいの？」




『うん。』




「……即答だね。」




『だってホントに好きだもん。』




「…っ、」




『めちゃくちゃ好きなんだけど。』




「わ、分かったから言わなくていい…」




なんなの急に･･･




好き好き言い過ぎじゃない？




言われてる私の方が恥ずかしくなってきたし！




『ふふ、言わせてよ。あの日だって、言う前に逃げちゃったのはお姉さんの方だよ？』




「……。」




『…あ、お姉さんじゃなかったね。』




ゆっくりと身体が離されて、至近距離で目が合う。

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