Torenia Fournieri -1-

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『怒んないでよ…』




しおらしく眉を下げる二階堂くんに、




「別に、怒ってないよ。」




淡々とそう答える。




だって、ホントに怒ってないから。




怒ってるんじゃなくて、呆れてるの。




二階堂くんが何を考えてるのか、これっぽっちも分かんないんだもん･･･




そんな私を一瞥すると、みるみるうちに眉間に皺が寄っていく。




『怒ってるじゃん。』




「…二階堂くんの方が怒ってると思うけど。」




だって今の私、無表情だもん。




二階堂くんみたいに不機嫌丸出しじゃないし。




『……。』




都合が悪いと黙っちゃうとか、子供みたい。




そうゆうところがなんだか気に入らない。




「…眉間に皺寄ってる。」




『……。』




「あと、目付き悪いし。」




『……元々だし。』




口を開いたかと思えば、聞いたことないくらいに低い声でボソッと呟く二階堂くん。




･････何その態度、おかしくない？




そもそも、最初からおかしいんだ。




合コンで出会ったばっかで、お互いのこともよく知らないのにキスなんかしちゃって。




もう忘れようって思ってたのに、こうやってまた私の前に現れた。




何事もなかったかのように、あの日と同じくしゃくしゃの笑顔で･･･




会ったその日にどうにかなるなんて、私にはよっぽど縁のない話だ。




酔っていたからとはいえ、どうかしてた。




だから･･･我に帰った時、色んな感情が一気に湧き上がったんだ。




二階堂くんは私と違うって･･･




ただ、歳上に興味があっただけなんでしょ？




友達づてに聞けば分かるはずなのに、二階堂くんからの連絡は全くなくて。




ちょっとでも期待してた自分が馬鹿みたい。




すごく悔しくて、苦しくて･･･




たった1日で、数時間で、こんな気持ちになるなんて思ってもみなかった。




･･･今だってそうだよ。




平静を装ってるフリしてるだけなの。




本当はコンビニで再会した瞬間からずっと、気を張っていないと涙が溢れそうで必死に堪えてる。




それなのに･･･




「っ、…痛いんだけど。」




無意識に離そうとしていた手を、離すまいと力強く掴んでくる。




『…今、離そうとした。』




･･･痛い。




馬鹿みたいに強く握られた手も、険しい顔で睨んでくる視線も、今の私にはキツすぎる。




「…っ、」




ついに、堪えていた涙が溢れてしまった。

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