Torenia Fournieri -1-

5 ページ39

.


「っ、さっぶ…」




ドアを開け外に出ると、キリッとした空気と冷たい風が吹き抜ける。




『そう？このくらいが丁度良くない？』




「いや、普通に寒いよ？！」




自分の身体を抱き締めるようにして、肩を竦めている千賀を横目で見やる。




『涼しいじゃん、ちょっと風は冷たいけど。』




「…ニカの体感温度ってバカなんじゃないの？」




ズズッと鼻水を啜りながら、呆れたように目を細めて俺を見つめる玉。




見た目とは裏腹に平気で毒を吐く玉に、初対面の時はイラッとしたっけ･･･(笑)




今となってはもう それが玉のいいところなんじゃねぇかな〜って、開き直ってる部分もあるわ。




なんていうか･･･嘘がつけない性格ってやつ？




小学校の頃からずっと一緒だった千賀と、高校に入って知り合った自由奔放な玉森。




性格とかで言えば全員合わないはずなのに、何故かこの3人でいるのが落ち着くんだよなぁ･･･




「ぶぇっくしょいっ！」




『うっわ、汚ねぇな！！』




「んはははっ(笑) 出たよ、千賀砲〜」




「あ"ー…最近鼻がムズムズすんだよね。」




『マジ最悪…(笑)』




いつの間にか、昼休みになると屋上に行くのが当たり前になっていた。




確か半年くらい前だったかな･･･




.




.




容姿が良く中性的な雰囲気の玉は、同学年だけでなく 先輩からも後輩からもすげぇモテる。




千賀もまぁまぁモテるけど、比にならないくらいのモテっぷりを 俺達は毎日のように見せつけられていた。




そうなると、休み時間の度に 教室には玉のファンが訪ねてくるわけで･･･




鬱陶しがる玉を見かけた俺達は、さすがに昼休みくらいは･･･と思い、玉を連れて昼は屋上で食べようって提案した。




誰もいない屋上は 思った通り居心地最高。




特に、女子がいないってとこがね (笑)




だけどその数日後に、まさか突然女子達がやって来るなんて思わないじゃん？




しかも、後輩だし。




･････3人もいるし。




顔を真っ赤にしてる子達の視線は、それぞれ玉と千賀に一直線だった。




あー･･･こりゃマジのやつだな。




恋愛に疎い俺でも さすがに分かった。




やっぱりモテるんだな、こいつら。




･････あれ？




後ろにいる子、今俺の方見てた？




『……。』




･･･気のせいか。




その時はそう思った。




でも、気のせいなんかじゃなかったんだ。

6→←4

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す