Torenia Fournieri -1-

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そんな私の考えに気付いているのかいないのかは定かではない。




『…丁度、お預かりします。』




何度か瞬きした後、さっきまでの甘えたような顔が嘘のように不機嫌に染まった。




「……ねぇ、何してるの。」




そして、目の前にいる不機嫌の塊がなんとも不可解なことをし始めた。




本来ならば私に渡すはずのレジ袋を、そのまま手に取ってバックヤードへと消えたのだ。




･･･は？




待って、意味分かんないんだけど。




私、今お金払ったよね？




･････なんで商品渡してくれないわけ？




いくつもの疑問が、徐々に苛立ちに変わる。




「なんで出てこないのよ…」




バックヤードから二階堂くんが出てこない。




まさか、お金だけ取るつもりなの？




･･･いや、さすがにそれはないよね。




『うわっ…』




ガタッ




ガタガタッ




『いって！』




奥から聞こえる声に、思わず眉を顰める。




･･･何してるの？




ひょこっと顔を覗かせた二階堂くんは、そんな私の顔を見てバツが悪そうに目を逸らした。




「ねぇ、私の買ったやつは？」




『……これ。』




右手に下げられた袋には、紛れもなく私が選んだ商品が入っている。




「…今の音は何？」




『………転んだ。』




「え？」




『お姉さん待たせてたし、急いで準備して出ようと思ったんだけど…』




「……。」




言われてみれば、二階堂くんの服装は制服から私服へと変わっていた。




「え、帰るの？」




コクリと無言で頷く二階堂くん。




「……まだ勤務時間じゃん。」




『違うよ、もう次のシフトの奴来るって。』




二階堂くんがそう言ったのとほぼ同時に、入口の自動ドアが開き、来店を告げる音楽が鳴り響く。




"お疲れ〜！ニカ、もう帰っていいよ。"




派手な髪色をした男の子が、二階堂くんに満面の笑みを向ける。




『おう！……じゃ、行こっか。』




「え…ちょっ、なんで？」




『ほら、早く(笑)』




「…っ、」




不意に繋がれた右手に、もう何が何だか分からなくなってきた。




･････振りほどきたいのに、振りほどけない。




こんな強引なやり方をする二階堂くんにも、それを拒めない自分にも腹が立つ。




あの日もそうだった。




こんな風に、彼の手に引かれて･･･

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