My BELOVED〈短編集〉

＊ ページ14

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『は……なんだよそれ、』




呼吸もままならないくらいの みっともない泣きっぷりに、先生はきっと呆れてる。




いや･･･




呆れるのを通り越して 引いてるかも。




でも、これでいいんだ。




『…あのさ、なんでそうなるわけ？』




「……。」




『俺がこんなだから？だから皆、俺を好きになるって？要するに俺のせいってこと？』




「違…っ、」




違う･･･と言いかけてやめた。




さっき、そう先生に言ったのは私だ。




先生は何も悪くないのに。




私が勝手に、好きになって、期待して、傷付いて、八つ当たりしてるだけなのに･･･




『A、こっち見て。』




「……。」




『……なぁ玉森、お前はなんの努力もせずにモテて いいご身分だよなぁ…』




「…え？」




『ふふ、前の学校で同僚が俺に言った言葉だよ。結構 酷くない？』




「…っ、」




笑ってる･･･けど、笑ってない。




こんな先生を見るのは初めてだった。




『必死で教員免許取って、赴任先決まって、精一杯頑張ってたんだよ俺は…』




「……。」




『どの生徒にも平等にするって決めてたから……ちゃんと慕ってくれる奴らにはもちろん優しくしたし、反抗期真っ只中みたいなどうしようもない奴には どうやったら真面目に生きてくれるか…必死で考えて向き合おうとしたよ。』




この人は、本当に玉森先生なの･･･？




まるで別の人を見ているようだ。




感情を剥き出しにして、自分の過去を私なんかに話そうとしてる。




ダメだよ、私なんかに話したら･･･




先生が話してくれるなら聞かせて･･･




そんな相反(あいはん)する2つの気持ちが、天秤にかけられてゆらゆらと揺れてるみたい。




『俺なりに、目指してた教師像ってのが確かにあったからさ…だから頑張ってた。』




「……。」




『よく女の嫉妬は怖いって言うじゃん？』




「え？」




『あれ、そうでもない？(笑)』




ふふって笑うから、あ、いつもの玉森先生だ･･･ってちょっと安心した。




「いえ…そうだと思います。」




実際に、私が先生から離れようとしてる理由がそれなんだもん･･･




『俺はねー…女の嫉妬より、逆恨みの方が怖いかな。愛が憎しみに変わる時が怖い。』




「……先生、」




『怖いってのとはちょっと違うか。なんか、所詮そんなもんなんだな、高校生のガキンチョでも所詮女なんだなぁって…』

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