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「ま〜くん、人がいいよねぇ」
「あっ!?凛月何すんだよ!」
衣更のノートを取ったのはこの教室では見掛けなかった黒髪に眠たそうな赤い瞳をした男子生徒だった。
『減るもんじゃないし、いいでしょ〜?ま〜くん』と語尾に星マークが付いていそうな口調でパラパラとノートを捲り始める彼と不意に目が合う。
「誰?」
「今日、転校してきたプロデュース科のAですが?」
まるで今気付きましたと云わんばかりの態度に少しカチンときた。
仕返しに2割程刺々しい口調で自己紹介をしてみるが、相手には通じず『ふーん……』と私を暫く眺めた後、机の上に衣更のノートをやや雑に置いたと思えば、綺麗な顔が覗き込むように私に近付いた。
「まぁ、『もう一人』増えたところで俺には関係ないんだけどさ〜。
俺の安眠の邪魔はしないでよねぇ」
誰がするものか。
顔を離し、ふぁ…と欠伸をしながら教室を出て行った彼にギリギリと歯を食い縛っていると何かを察した衣更が慌てて空気を変える為に再度話し掛けてくれた。
「わ、悪いA……!
彼奴、寝起きはあんま機嫌よくなくて…
…悪い奴じゃねーんだ!」
「大丈夫だよ、気にしないから。
ノート有り難く借りるねっ」
腹の中で沸々と沸き上がる怒りを抑える為ふふふっと笑いながら、私は衣更のノートをスクール鞄に仕舞い、席を立つ。
「それより、もう一人のプロデュース科の子って放課後何処に居るのかな?
昼休みに会えなかったから、出来れば会いたいんだけど……」
朝のHRへ向かう道中で教師が教えてくれたもう一人のプロデュース科の子。
新設されたばかりのプロデュース科には専門の教科書も講師も授業も無く、完全な手探り状態からのスタートだ。
その中で彼女はこの一ヶ月の間、少しずつではあるが既にプロデューサーとして頑張っているらしい。
教師には昼休みにでも会いに行くといいと言われていたが、タイミングと不慣れな学院内で彼女が目撃された場所を他の生徒に訊ねるだけで終わってしまった。
「あぁ、あんずなら今日の放課後は練習室に居ると思うぞ」
「そうなんだ、有難う衣更!行ってくる!」
意気揚々と教室を出て行く音波に向けて、衣更は『危ねーから、廊下は走るなよー』と言い、彼女の背中を見送ってくれた。
見えなくなった所で『さてと』と自分は生徒会室へ向かう為に準備を始めたが、暫くしてハッとある事を思い出した。
「彼奴……練習室の場所知ってたっけ…?」
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作者名:ナナシ | 作成日時:2018年4月7日 12時