一夜十起【下】

序章 ページ1

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「首領(ボス)、お呼びですか」


立派な建物の一室に一人の青年が入って来る。部屋の中には、金髪の少女と並んで立つ一人の男＿＿＿＿＿

青年の呼びかけに、男は「ああ」と答えた。青年は不思議そうにしている。



「中也君。君は以前、とある少女をポートマフィアに勧誘したいと言っていたね」

「そうですが・・・それが何か？」

「これを見たまえ」



男＿＿＿ポートマフィアの首領 森鴎外は青年＿＿＿中原中也に一枚の資料を渡す。その意図が読めず怪訝そうに受け取った中也。だが、それに目を落とした瞬間に驚きの表情に変わる。

その資料は、先程言われたとある少女の資料。だが、その資料は空白だらけだった。名前以外の情報が一切なく『身元不明』の文字が目立った。



「中也君の話によると、その少女の異能力は実に素晴らしい。是非ポートマフィアに入って欲しいものだよ」

「ですが、以前は俺の判断に任せると・・・」

「勿論そのつもりだった。だけど、そう悠長に言えない状況になってしまってね。彼女の異能力を聞きつけた輩が彼女を狙っているらしい」



鴎外の隣に立っていた金髪の少女＿＿＿エリスが中也の手元にある資料を覗き込む。その表情はいくらか楽しそうだ。

成程、と鴎外の言葉を聞いて納得する中也。全ての意図を汲み取り、彼は妖しく笑う。鴎外もまた、同じように笑った。



「＿＿＿＿＿言いたいことは判るね？」

「はい。必ずや、アイツをポートマフィアへと引き入れましょう」





【一夜優樹菜】


名前の書かれる資料には、そう書かれていた。





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