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☆
「ねえ、あそこ見て。可愛い〜」
「んね!癒しじゃん」
近くを通りかかっていく女子高生達がこちらに視線を向けながらコソコソと話している声が聞こえ、優樹菜は気まずさで視線を逸らす。
自分の隣に座っている少年は満面の笑みでクレープを頬張っていた。近所の広場にある、有名なクレープ屋さん。たまに友達と食べる、と言ったら彼が食いついてきたのだ。どうやら甘党らしい。
彼____環はそんな女子高生達からの黄色い声と熱い視線に気づいているのかいないのか、ニコニコと笑っている。
「美味しいね、ここのクレープ!僕甘いの好きだからさあ」
『そうなんだ。喜んでもらえたようで何よりだよ・・・』
「ね、優樹菜ちゃん。そっちのも一口ちょうだい?」
『え』
ダメ?ときゅるんとした上目遣いで訊いてくる。
優樹菜は自分の手にあるクレープを見たあと、おずおずと環にそれを差し出した。環はパッと表情を明るくして優樹菜のクレープに口をつける。
その様子を見ていた先程の女子高生も「きゃああっ」なんて顔を赤らめていた。
「あの二人、やっぱり付き合ってるのかな?」
「可愛いカップルだねぇ」
『(・・・・泣きたい)』
こんな一日になるはずじゃあなかったのに。
今日は家に帰って、昨日買った小説の続きを読むはずだったのに。
なんでわざわざ私を・・・なんて思ってしまうが、相手は転校生。そんなことを言えるはずがない。傷つけてしまうオチが目に見えてわかる。
二人でクレープを食べ終えて少し談笑していた時、広場の向こう側から突如悲鳴が上がった。
「きゃああああああっ!!!」
「わあっ!?な、なに?」
『さあ・・・・』
目を見開いて叫び声が聞こえて来たほうを見る環。そして彼は少し考えたあと、優樹菜の腕を掴んだ。そのことに優樹菜が理解するよりも早く、環は優樹菜を引っ張るようにして走り出した。
どうやら叫び声のほうへと向かっているようだ。
『えっ、ちょっと!』
「行ってみようよ!」
絶対嫌な感じしかしないのだが。
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作者名:ゆゆ | 作成日時:2023年5月30日 22時