レンタル彼女【桃】

episode : 3 ページ5

俺の手を強く握り返しているAは酷く震えていた .








「 ホラー苦手じゃなかったっけ , 何でホラー選んだの ? 」







「 前作は平気だったの … !! 」







「 あー , 俺と観たやつか 」







「 今作は怖い要素多過ぎて誰でも怖いよ ! 」








映画の途中怖過ぎて涙を流していたからか , ズビッと鼻を啜って言い訳をツラツラと述べるA .




前作より , 寧ろ怖くなかったけどな .
クチコミだって , レベルが下がったっていうコメントばかり .




前作が平気で , 今作が駄目だったのは何でなんだ ?








「 前作の時は , さとみにずっと抱き着いてたから平気だったのかも 」








ボソッと呟いたAの言葉を俺は勿論聞き逃さなかった .


だから , 何でそんなこと言うんだよお前は .
何で , 過去を振り返るようなことばかり言うんだよ .








「 そうだったけ , 覚えてねぇや 」








何て嘘を吐けば , 少し悲しそうな顔をして
「そっか」
って素っ気ない返事を返された .




現在時刻は17時 .

Aをレンタルしてまだ5時間しか経っていない .
残り19時間も何をして過ごすんだ ?








「 どこか行きたい場所とかないの 」







「 えー …

普通利用者さんが全部プラン決めてくれるからさ ,
何も考えてないや 」







「 … 家とかは駄目なの 」








ビクッと肩を揺らすAの反応からして , 自宅にレンタル彼女を招き入れることは違反行為なんだろう .


まぁ , 当たり前だろう .


無理なら , 別の場所行こうか

そう口を開こうとした時 , Aに口を閉ざされた .








「 絶対 , お店の人に言わない ? 」







「 … うん ? 」







「 ならいいよ , さとみの家行こ 」







「 は ? 大丈夫なの ? 」







「 さとみだけ , 特別だよ 」








だから特別って何なんだよ .

特別って言葉の狡さ , どれくらいか知らないだろ ?




好きな人に , 特別だなんて言われて , 浮かれないやつがいると思ってんのか ?




俺が頭の中でこんな事を考えているのもどうせ知らないんだろうな .




Aは数年前まで同棲していた俺の自宅へと軽い足取りで向かっていた .








「 これ以上 , 俺を狂わせないでくれ … 」

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