レンタル彼女【桃】

episode : 4 ページ6

俺の自宅に入るや否や , リビングに物を投げて部屋の物を漁るA .




整理整頓をしていないと落ち着かない性格が役に立ち , 生憎物は散らかっていない .




誰かに見られたら困るなんて物もないし , もう好きに漁ってくれ .

そう思いながら部屋中を駆け回るAを見ていたが , 絶対に見られてはいけないものが俺にはあったのを思い出した .








「 待っ … !! 」







「 … ここ , そのままなんだ 」








そこは同棲していた時にAの部屋として使っていた場所だった .

数年前 , Aが家を出て行ってから , 何一つ捨てずそのまま残しておいたもの達 .




部屋に入るのも億劫で , 久しぶりに空けたその部屋は埃臭かった .








「 何で , そのままなの ? 」








1番痛いところをついてくるな .



別れたなら残しておく必要なんてないのに .

だったら何で残してるのか , って .




そんなの答えは分かりきっているだろう ?








「 … Aの事 , 忘れたくなかったから 」







「 … ふふ , なにそれ 」








恥ずかしさで下を向いたまま俺は正直に本音を吐いた .

未練タラタラな俺は , 捨てるという選択肢なんて無かった .




ずっと , このまま残そうと思っていた .




机の上に大事そうに飾られている , 写真立てだって .








「 これ , 初デートの時の写真だよね 」







「 … 何か , Aちょっと老けた ? 」







「 なっ , 失礼な !

大人になった , って言ってよね ! 」







「 確かに , 数年前よりずっと綺麗になってる 」








2人で写真立ての写真を覗きながら ,
まるでレンタル彼女を利用していないかのような空間が作り出される .




Aからはふわっと甘い香水の匂いがして , つい頭がクラっと揺れる .

俺の , 嫌いな香水の匂いだった .




今の状態だけ見れば , 期待しても良いのかも知れないが , 俺の嫌いな服を着て , 俺の嫌いな香水を付けてくるAが俺の事をまだ好きだなんて有り得ない話 .




引きずってたのは , 男の俺だけだったんだろうな .




久しぶりにAの部屋に入り , 少し興奮気味な俺はまた懐かしいものを見付けて手を伸ばした .

いや , 伸ばせられなかった .









「 何 , してんの ? 」









体が沈んだと思えば , そこはAのベッドの上 .

俺に馬乗りになるA .




返事は返って来ないまま , Aの唇が俺の頬に触れた .




一体 , 何がしたいんだ .

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