【1】都市伝説 ページ4
まだ校舎は開いてないから、とサッカー部の部室へ入れてもらった。
部室はプレハブ小屋で暖房もなく、外とあまり変わらないくらい寒かった。
湾田「寒いけど、外よりはマシだろ?」
ニカッ、と笑ってそう言われると風がないだけマシか、と思えた。
サメ頭くんはと言うと、さっきから一向に口を開かない。私のことをじっと睨んで、目が合うとフッとそらす。
湾田「………浪川、お前空気読め」
湾田くんがサメ頭くんの肩に手を置いた。………彼は浪川くんというのかな?
浪川「なんだよ湾田」
湾田「転校してきたばっかで緊張してる女子を睨むなよwただでさえサメみたいなお前だ。そのうちAを食いそうでこえーよ」
声をあげて笑う湾田くん。浪川くんは一層不機嫌な顔になった。
………まぁ、見てるこっちは楽しくないこともないんだけど。
その時、部室に誰か入って来た。
凪沢「おはようございまーす」
海図「おはようございまーす!」
浪川「おう、おはよう」
………ほんの一瞬、ほんの一瞬だけ浪川くんが微笑んだ。
おはよう、という声もさっきまでとは違い、いくらか空気がなごんだ。
凪沢「あれ、この人誰?」
目付きの鋭い男の子が私を指差した。
湾田「唐沢Aって、転校生だ」
海図「へぇー!サッカー部に入るの?」
唐沢「あ、いえ、校舎が開いてないので…………」
海図「なーんだ、そっか」
噛まないように、うまく回らない口を動かした。………でも背の低いその男の子はつまらなさそうに口を尖らせた。
凪沢「唐沢は何年?」
唐沢「えっと、二年です」
この子も背の低い子も、私よりは背が低い。………見た目は一年生だけどもし先輩だったらどうしよう、なんて考えていた。
凪沢「あ、先輩か」
先輩に対してタメ口で話しかけたのに、凪沢くんは謝るどころか悪びれた様子も見せなかった。
私がうろたえていると、それに気付いた湾田くんがこう言った。
湾田「うちの学校、先輩後輩とか上下関係ないんだぜ」
唐沢「上下関係が…ない?」
海図「うん、普通は先輩に敬語とか使うらしいけど、うちはタメ口もあだ名も大丈夫。…上下関係なんて、もはや都市伝説なんだよ」
唐沢「そうなんだ…………えっと」
海図「俺は海図航一郎!よろしく!」
凪沢「ちなみに俺は凪沢渚。…よろしく」
唐沢「よろしくね、凪沢くんと海図くん」
今日の海の男!
浪川「おい、そこのお前!…俺の彼女になれ!!」
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涙音(プロフ) - *文月*〜huduki〜さん» 返信遅くなってごめんなさい。こんな風に誉めていただいたのははじめてです。書いていて良かったです........!実は近々この続編を上げることになりました。もしよろしかったら読んでみてください。本作よりさらに良いものになるよう精一杯執筆いたします。 (2016年12月11日 23時) (レス) id: 541fead6be (このIDを非表示/違反報告)
*文月*〜huduki〜(プロフ) - 私は5年くらいこのサイトで色々な小説を読んできましたが、その中でこの作品がダントツで面白いです。もっと熱く語りたいのですが、文字数の上限をこえそうなのでこれくらいにしておきます。気持ちが伝わると嬉しいです。これからも素敵な作品を作っていってください。 (2016年11月14日 10時) (レス) id: bb022945e6 (このIDを非表示/違反報告)
涙音(プロフ) - 律華@Twitterはじめました。さん» コメントいただいて久しぶりに戻って参りました…とりあえず少しだけ更新しましたが、夏休みに完結できたらと思います!すっかり放置してました… (2015年7月4日 21時) (レス) id: 71e3a373e6 (このIDを非表示/違反報告)
律華@Twitterはじめました。(プロフ) - 更新頑張ってください!続き見たいです! (2015年7月4日 5時) (レス) id: 7cb333b288 (このIDを非表示/違反報告)
海王星(プロフ) - 久しぶりの更新だね笑 相変わらずの素晴らしい文才!期待に胸が弾むぜ( ´∀`)← (2014年8月9日 17時) (レス) id: c49ea11c01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:涙音 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/enkorimatsue/
作成日時:2014年1月14日 1時