▽紫の煙たさ ページ33
ショッピ、と名乗ったその男はそれだけを言って奥へ続く長い廊下に帰っていった。
それを見送ると大先生は私の手を引いて再び部屋に入ろうとする。どくどくと心拍数が上がっていくのが分かった。別にこれは大先生に手を引かれているからとかいう乙女な理由なんかではなく____
ut「ごめんなぁAちゃん。彼あーゆー子やから…って、どしたん」
『ショッピ、って言いましたよね』
ut「おん、言っとったよ。ショッピ君やし」
『彼って"どこから帰ったんですか"』
ただの恐怖からであった。
いや待て、だってさ。
「どこって…」とくぐもった大先生の声が聞こえて来る。妙な間を空けて、私の顔を覗き込む様な姿勢になった大先生はにこりと笑った。
ut「任務、からやな」
ふふ、と笑う声にぞくりとして冷や汗が流れる。
私の知っているショッピという人間はもう一人いる。
ただ彼は、私の優秀な部下で。
ひんやりとした大先生の手が私の頬に当てられる。
指先が少し首について、まるで脈拍を図るみたいにして小さく笑う。
どうかしたのか、と二度目の質問。
『騙されてた、って事か…』
自嘲に似た笑みを貼り付ければそれに反応したのか大先生は「それはちゃうな」と淡々と口を開く。
ut「君自身が、気づいてないフリしてたんやろ」
『は、？…いや、知らなかったですよ』
ut「いーや、気づいとったんちゃう？"自分の部下"やもんな。怪しい行動くらいあったやろ」
『…』
ut「ふふ、図星やった？
総統連れ去らう優秀な指揮官が、気づかん訳ないよなぁ。答え合わせする？」
大先生は紫色の彼が消えていった廊下の奥を見つめて私に言った。
ut「ショッピ君は、"こっち側"や」
ピキ、と何かにヒビが入った様な気がした。
それは紛れも無く私の中から聞こえた音で、信頼とかプライドとかに傷がつく音だった。
ショッピ君は"向こう側"。
元々、彼は___
あの国からすれば"観光客"だったのだ。
嫌な推測…否、それはほぼ確信的な事実として私も分かっていた。
ut「ショッピ君、ずーっと君の後ろにおったで。
トントンとグルッペンと指揮官サマで歩いてる時から…僕が何言いたいか分かる？」
あぁ、成る程。
_____最初から勝ち目など無かったのだ。
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零(プロフ) - kouboukunさん» ありがとうございます！そう言って頂けると嬉しいです！多分は基本的に危なそうだな…という勝手な想像に共感してくれている様で何よりです…()これからも更新頑張ります！ (2020年5月24日 18時) (
レス) id: c17c74b3a4 (このIDを非表示/違反報告)
kouboukun(プロフ) - なんかこれを見て思いました・・・。総統の多分は危ない多分ですね(*´▽｀*)面白かったです！すごく夢中になって読める小説だし、奥が深くて、好きです！（突然の告白。）これからも更新頑張ってください！！ (2020年5月20日 16時) (レス) id: 6b5d77f9d6 (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - seruharu217さん» syp君についてはまだ出て一話目ですので、情報量が少なかった様ですみません…次の話辺りからもう少し詳しくするつもりですので、その際分かるかと…！（質問に添えていなかったら申し訳無い）ありがとうございます！そう言って頂けると嬉しいです！頑張ります！ (2020年5月15日 23時) (レス) id: c17c74b3a4 (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - もっちさん» ありがとうございます！今や社会はその話題で持ちきりですしね…無事元の暮らしが出来る事を祈るばかりです。今後も面白い作品に出来る様、更新頑張っていきます！ (2020年5月15日 23時) (レス) id: c17c74b3a4 (このIDを非表示/違反報告)
seruharu217(プロフ) - あの、すみません。ショッピ君ってどんな立場ですか？二人いる感じなんですかね・・・？このお話は好きです！更新頑張ってください！ (2020年5月13日 17時) (レス) id: e769def405 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：零
| 作成日時：2020年3月15日 14時
