Smilest

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監「じゃ、藤ヶ谷くん入って
来るとこから、
Aさん、いつもの感じでいいからね」



私「……はい」





言われたとおり、



藤ヶ谷さんを席まで案内して、



コーヒーの注文をうける





監「はい、カット〜」





ドキドキ……



大丈夫だったかな……




こんなちょっとのシーンが



私には何十分もに感じる





そして、カットがかかった瞬間、



役者の顔から



私が知ってる顔に戻って



笑いかけてくれた藤ヶ谷さん





わかった……



これが、『こっち』だ



この素に戻った時。





演技で笑ってるんでも、喋ってるんでもなく



この、藤ヶ谷さんが



『こっち』って事でしょ？





藤「よくできました、笑」



私「ほんと？」



藤「うん、ほんとに店員さんかと思った」



私「ほんとの店員だし！」



藤「そうだっけ？笑」





こうやって、からかわれてるのも



嬉しくてたまらない





なんか視線を感じ、見ると



そんなやりとりを、近くの席に座って
ニヤニヤと見てる横尾さん





横「なんかいいね」



私「え？」



藤「なんだよ、笑」



横「太輔のそういう顔……」


藤「余計な事は言わないでいいから、
ほら、次、渉も一緒だって」





何か言いかけた横尾さんを連れて、
別のシーンを撮りにいく藤ヶ谷さん





母「Aー、女優さんかと思ったわー」



私「もー、あんなちょっとのシーンで
女優もなにもないでしょ」



母「あー、お父さんにも見せたかったー」




たまに、こうやって本音を漏らす母




私「それは、……そうだね」





私も、お父さんに色々見せたかった



このお店がテレビに映る事とか、



私が好きになった人……とか





藤ヶ谷さんが役者の顔で



物思いにふけてる演技を遠くから



見つめながら





そんな事をぼんやり考えた







撮影はスムーズに進み



横尾さんの出演シーンも、



お客さん役でコーヒーのおかわりを



オーダーするだけだったはずが



オムライスをオーダーするアドリブを



勝手にかまし、無事終わった





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