小さな幸せ 5

191 ページ29

走る車の中で思いだした
みっくんの誕生日




ほんとだったら……



焼肉食べてからおうちで
お祝いしようと思ってたのに




藤「どした？」




下を向いた私に
気づいた藤ヶ谷さん




私「あの、……ケーキ屋さんに
寄ってもらえませんか？」



藤「ケーキ？
そっか、あいつ誕生日か、
どっか開いてるかなぁ」




嫌な顔ひとつしないで、
車を走らせてくれる




私「私の誕生日の日に、みっくん
サプライズで丸いケーキをくれたんです。
その時はまだ付き合ってなかったんだけど、
すっごく嬉しくて……」



藤「うん」



私「昨日みんなでお祝いしたけど、
やっぱりふたりでちゃんとお祝い
しようって思ってたのに、
わたしのせいでこんな事に……」



藤「そっかそっか、、
あー、泣かない泣かない、笑」




ビクッ！



頬を撫でられ、固まる




藤「あ、ごめんね、癖でつい、笑」



私「……いえ、大丈夫です、笑
そんなに似てますか？奥さんに」




普段の藤ヶ谷さんをよく知らないけど、
彼女とか奥さん以外には、
こんな事しないだろうなって




藤「うん、なんだろうね、
すごい似てる……かな、笑」




微笑みながら、運転してるのを見て



よくわかる



今、奥さんの事考えてるんだなって



幸せそうだな、こんな旦那さんなんて




私「奥さんの事、大好きなんですね、笑」



藤「ふふっ、バレた？」



私「羨ましいです、大事にされてて」



藤「北山もでしょ、Aちゃんの事
大事にしてると思うよ？
……俺も同じ事したと思う。
何を犠牲にしても、
自分より大事な人、守りたいんだよ」




自分より……大事な人……




どうしよ、せっかくとまったはずの涙が


また、とまんないんだけど




藤「あらら、大丈夫？笑」




車を止める藤ヶ谷さん




私「大丈夫……です。
……え、ここ……」




目の前の光景に、固まった



そこは、さっきの事故現場だったから




私「……なんで？」




みんな、何してるの？




藤「薮がさ、探してやりたいって、
大事なものだったんでしょ？」




もう、ほんとどうしよ、



溢れだした涙がとまらないよ




アイドル達が、あんなところで
探しものなんて、ダメじゃん




.

192→←190

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す