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言い切ったファラオの言葉に、否が応でも頰が熱くなる。熱いから彼の拘束から逃げようと思ったのに、これでは全く意味がないどころかむしろ悪化している。急にしおらしくなったわたしを不思議に思ったのか、ファラオは無理やりわたしの身体を方向転換させ、向き合うような形にさせる。
不安定な体制に、思わず彼の両の太腿に手をついた。
「なんだ、瞳が潤んでいるな」
「…は、なして、」
「隠すな。見せよ」
至近距離で、太陽の光を移したような黄色の瞳がわたしの瞳を覗き込む。ただただ羞恥が身体の奥から湧き上がってきた。身体を捩って逃げようとしても、この不安定な体勢では、椅子から落ちる予感がして思う通りに動けない。追い詰められた状況がどうしようもなくて、ぽろりと生理的な涙が溢れた。
それを見て、ファラオがうっそりと笑みを深める。
その時、脇の下に手を差し入れられ、それこそ猫のように上に引っ張り上げられた。抵抗する暇もなく、足が宙に浮く。そしてそのまま抱き上げられる。犯人は1人しかいない。
「王様!」
「黄金の。貴様はこの女には興味がないのではなかったか?」
「…気が変わった」
視界がめまぐるしく変わる。いま目の前にあるのは、柔らかな金糸と、宝石のような赤い瞳。ギルガメッシュはわたしを片腕で抱き上げて、もう片方の手で優しく涙を拭った。
「そうだな。貴様の瞳は、水気を含んでいた方が美しい」
「あの、王様、おろしてくださ」
「だが、貴様が涙を流す理由は我でなくてはならぬ。それと__あぁ、気に食わぬな。実に気に食わぬ」
王様の形の良い唇が動く。そこから紡がれる音に耳を傾けることしかできなかった。
「他者から愛されることは許す。だが愛すな。その感情を向けて良いのは我に対してのみだ。それはそこにいる王に対しても変わらぬ」
その言葉の意味を理解すると同時に、体から力が抜ける。顔はこれ以上ないくらいに熱が集中している。
逃げない事がわかったのか、王様は抱き上げていたわたしの身体を床におろした。立つこともできず、そのままへたり込んでしまう。
そして目の前に2人の男が立つ。わたしを見下ろす四つの瞳。
「貴様はまこと強欲よなあ。王ひとりの寵愛では物足りぬのか?」
「ハハ。男としては、好いた女の希望は叶えてやるべきだろう。だが許さぬぞ。余たちの愛は、一身に受けるには荷が重かろう」
どちらかを選べ、と。
ふたりの王が手を差し伸べた。
わたしの背には冷や汗が伝って、そして__
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闇音(プロフ) - 初めまして。こちらのシリーズのお話、いつも楽しく読ませていただいています。ジーク君と1日デートするというリクエストは可能でしょうか?本編ならびに番外編も更新を楽しみにしています。 (2020年3月28日 1時) (レス) id: f425466021 (このIDを非表示/違反報告)
牛乳(プロフ) - いつもぜんざいさんの小説を楽しく読ませて頂いてます(>_<)すみませんリクエストなのですが、キングプロテアちゃんと夢主ちゃんとA組のお話が見たいです…!更新楽しみにしてます! (2019年4月25日 20時) (レス) id: 2e7f27e19e (このIDを非表示/違反報告)
リリカ(プロフ) - こんにちは!いつも楽しみにしてます! リクエストで岡田以蔵と夢主とA組の話をお願いします! (2019年1月4日 9時) (レス) id: 317858aab0 (このIDを非表示/違反報告)
ジャンヌオルタサンタリリィ - 初めまして!インド兄弟楽しみです!それからリクエストよろしいでしょうか?私はロビンとビリーが取り合うのがいいです! (2018年10月11日 17時) (レス) id: 9d73ceb014 (このIDを非表示/違反報告)
夜ト(プロフ) - インド兄弟の続き楽しみにしています!更新頑張ってください! (2018年10月6日 16時) (レス) id: fa8e26fbdb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぜんざい | 作成日時:2018年5月27日 11時