あなたへと歌う (ページ8)

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これはWBCが始まる少し前のこと。

アイドル養成高等学校から初のワールドツアーを開催していた。

日本、韓国、カナダ、イギリス、ドイツ、スペイン、そしてアメリカ。
全国ツアーはしたことがあるものの、こんなに大規模なのは初めてである。
アメリカ以外の国はそつなくこなしたのだが、問題はアメリカ。
彼がいる国、彼が観にこれる可能性がある国。
…それがとても怖い。他の人に見られるのはどうって事ないのに、こんなの私らしくないと思いながらアメリカ入りをした。

こういう大切な時に限って彼は連絡をしてこない。
いつも私からしたら関係ないことを連絡してくるくせに。

「皆様方、よろしくお願い致します。」

ステージ以外で上手く笑うことのできない私は軽く微笑みながら言った。変では無いだろうか。
そう考えているうちにアメリカのライブのプロデューサーと話をする。

「よろしくね、目黒A。貴方の活躍はここ、アメリカまで届いているわ。」

「ありがとうございます。目黒Aと申します。
この度はよろしくお願い致します。」

「…あら、礼儀正しいこと。早速で悪いんだけど、音響の調整のために1曲歌って貰えないかしら？
あなたの技術は知っているけれど1度生で見てみたいのよ。」

「わかりました。お願いします。」