00:03 ページ4
そうだ、スマホはどこだ。確かポケットに入れていた。
動かない体に鞭を打ってポケットへ手を伸ばす。しかし何もなく、履いていたジーンズの手触りしか感じない。
ならどこへ、と思って目だけを動かすと、私が立っていた近くの机の下に転がっている。あまり良く見えないが、あの爆風だ。画面にはヒビが入っているだろう。
これほど酸素が足りなくなったことは今まで無かった。頭が痛い。耳鳴りもする。五感の反応も鈍くなっている気がする。この気持ち悪さは吐き気だろうか。
視界が暗くなってきた。炎すら見えなくなっている。地面のコンクリートがうっすら見えるだけ。冷たさはまだ感じることができる。
しかし、体の麻痺も引いてきたというのに今度は脳の信号機能が停止している。叫ぶこともできない。体が思う様に動かなくて、無理に動かしていたら横たわっていた体が仰向けになる。
「っう……ふ……はーっ」
息が上手く吸えなくて、大口を開けて酸素を取り込む。いきなりの酸素に驚いたのか、それとも煙ごと吸ったからか知らないが咳が止まらない。喉も痛くなってきた。
目も痛い。鼻からも煙を取り込んでいるから、鼻の奥をつんざくような感覚に陥る。それが痛くて、少しだけ涙が出てきた。といっても、実際に涙を流しているかは確認できていないので分からない。
せめて炎が広がらない様に、氷の壁でも作っておこう。簡単にしかできないが、あと二十分は持つ様な。
ああ、普通に断れば良かったのに。体調が悪いとでも嘘をつけば簡単に休めたのに。大体、今日は休みを取っていたじゃないか。なのにいきなり呼び出しやがってあのクソ男。挙句爆弾手渡してどこ行きやがった。末代まで呪ってやるからな。覚悟しておけ。
薄れゆく意識の中、あのクソ男への恨みを吐いた。それが届かないと知っていても、言わずにいられなかったのだ。
完全に潰れた視界の中、微かに見えた。紫のストールと黒の雑面。確か、ストールの彼はこの輸送班の責任者だったはず。彼が第一発見者となったか、なんてどうしようもなく笑った時、私は意識を失った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 81人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：生茶 | 作成日時：2023年10月29日 1時
