名誉ある古典部の活動 ページ10
・
今日も奉太郎と一緒に登校し、授業を受け、部室で本を読む。
古典部が復活してから一ヶ月。
部室である地学準備室は私の中で気安い場所としての地位を確立しつつあった。
放課後に来たいときに奉太郎と訪れる。
里志がいるかもしれない。
えるちゃんがいるかもしれない。
2人ともいるかもしれない。
奉太郎以外に誰もいなくてもそれはそれで構わない。
話をすることもあるし、皆黙っていることもある。
里志はもともと沈黙にも平気で耐える気質だし、えるちゃんは好奇心が炸裂しなければおおよその印象通り清楚になってくれることが分かった。
そんなわけで、意図したわけではないのだが古典部は部活というより俱楽部といった趣になっていた。
そして、一緒にいて疲れないのであれば、私はもともｔ人嫌いと云う訳ではない。
それは奉太郎も同じ。
だが、里志は未だにそれを勘違いしている節がある。
小雨の降る今日は、私と奉太郎、そしてえるちゃんがいる。
私たちは窓際に椅子を引いて深くもたれかかり、奉太郎は安いペーパーバックを私は夏目漱石の「こころ」を斜め読みしている。
えるちゃんは教室の前の方に陣取って、なにやら厚い本を読んでいる。
気だるい放課後の風景、というやつだろうか。
するとぱたん、と本が閉じられる音がした。
それに続いて背中を向けたままえるちゃんがぽつりと言う。
千反田「不毛です」
折木「一年に二回植えるやつか？」
『それは二毛作でしょ』
千反田「そうじゃなくてですね」
『不毛なの？』
千反田「そうです。不毛です」
折木「なにが」
えるちゃんはじっと私たちを見て、それから右手で教室全体を示してみせた。
『えるちゃんはなにかこの古典部に求めるものがあるの？』
千反田「あります」
折木「ほう」
千反田「でもそれは一身上の都合です」
「今は古典部のことを言っているんです」
「古典部は部活動ですから、活動しなければいけません」
折木「それはいいだろ、だがそれにしても目的がない」
千反田「いえ、それもあります」
「十月の文化祭に、文集を出します」
続く (更新停止中)
お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←8
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：名稀ーなきー | 作成日時：2023年3月20日 23時
