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ポケットの中で、携帯がブルブル震えてるのが分かった。

周りは誰も気づいていない。
俺は着信を無視して、来年のツアーに向けての話し合いに変わらず耳を傾けた。





「それでぇ、やっぱトニセンのコンサートでやったやつをそのままやっちゃうとさあ。ファンの子も、あれこれ去年見たな?みたいになっちゃうじゃん」

「なりますね」

「でしょ?それ良くないよね」





井ノ原くんが、珍しくスタッフと結構ガチでやり合っていた。他のみんなは傍観しているだけだったが、なんとなく井ノ原くんを応援したい気持ちになった。坂本くんなんかはたまに口出しもしていた。なんだかいつもと違う、変な夜だった。





「でもやっぱりまだ全部を新しくするだけの余裕はないです、ぶっちゃけ。他の若いグループも先輩グループの衣装もセットも借ります。ファンも分かってますよ」

「だっからそーゆー話じゃないんだよな。分かってたらいいのかって、違うじゃん」





剛は早速飽きている。壁にかかる時計を見て、早く終わんねえかな、とも言わんばかりの顔で井ノ原くんとスタッフを交互にじろりと見つめた。

岡田もつまらなそうにしていた。貰ったハンドアウトを綺麗に折り、開いたり閉じたりしている。





「せめてリメイクするとかできないの?そのままは俺たちも気が引けるよ」

「時間がないんですよ。もう年明けたらすぐなんですから」

「それでもなんとかしようと思えばできるじゃん。まだ何ヶ月も先だよ。やろうって思わないからできねえんだよ、なあ?」

「井ノ原ー」





やんちゃしてた頃の語形が出始めた井ノ原くんを見ると、長野くんはすかさず止めた。井ノ原くんは歳上の長野くんのいうことはだいたい聞いたが、今日は止めずに中々ヒートアップしている。なんでだろう?ちょっと前までは、こんなことなかったのにな。

すると、長野くんは暇そうにしているカミセンを見た。そしてすぐ、ちらりと腕時計に目をやった。

剛が片眉を上げる。染め直して更に色がぬけた金髪が、暗い部屋でも輝いている。





「三人、明日あるなら帰ってもいいよ」

「え?」

「もう、3時になっちゃうから。俺らはほら、明日は歌番組だけだからまだ大丈夫だけど。明日昼仕事ある人いる?」






ポケットの中で携帯がまた鳴った。
振動が足に伝わる。俺は膨らんだポケットをおさえつけた。






「ふうん。ホントに帰ってもいいわけ?」





長野くんの目が揺らいだのを、俺は見逃さなかった。

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tana - 数年前、ド新規の時にこの作品を見つけ、それから今まで定期的に何度も読みに来ているほど好きな作品です。穏やかな気持ちで読める作品ではないのですが、美しくて胸が締め付けられます。 (2021年12月19日 23時) (レス) id: 552449ccaa (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - なるちゃんさん» ありがとうございます。私もコンサートにお邪魔したのですが、健くんの最後の投げキッスにやられました...。よかったら新作も見てくださいね! (2017年11月24日 2時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - 泣きながら読み終えました。フィクションだとわかっているのに現実といろいろリンクして感動しました!それにしても健ちゃんはホント儚く美しい。onesコン行きましたが健ちゃん肌ツルツルだったよ! (2017年11月23日 8時) (レス) id: a1fe1fb9b8 (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - オレンジさん» ありがとうございます。健くんのあの危うさは何なんでしょうね!とても嬉しいです。本当にありがとうございました! (2017年11月17日 8時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
M a o(プロフ) - ふきさん» ありがとうございます!健くんのV6への向き合い方を小説で表現出来ていれば良いなと思います。嬉しいお言葉、毎回ありがとうございます!励みです。 (2017年11月17日 8時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まお | 作成日時:2017年10月17日 7時

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