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赤黒い空にももう慣れた。
雲は白というよりはグレーに近い。常に薄暗く、光の当たらない街に住み続けて十年。団地ビルの一階角部屋に、健は今日も一人で帰る。
力仕事は元々苦手だったが、健に充てられた仕事はそれしかなかった。というのも、火星は急激に人口が増えたせいで仕事の数が圧倒的に足りていないのだ。健の仕事は、朝から晩まで土を耕す仕事だった。ふざけているように聞こえるが、実はすごく大切な仕事だ。火星は地球のように作物が豊かに育つ地ではないので、地道に毎日土を耕して地層を柔らかくしないと、人間が食べる野菜や米がまったく育たない。
ここへ来る前、健は火星は天国のようなところだと思っていた。行けば爆弾には当たらないし、配給チケットも無い。びんぼうな思いをすることもない。離れ離れになった友達にも会えるし、大好きな家族とまた新しい生活ができるのだと思っていた。しかし現実は非情だ。健が夢見たものはたったのひとつも火星にはなかった。
しかし健はそれでも自分は幸せだと思っている。
職にあぶれた人間は死ぬ。惨めな思いをして死んでゆくなら、あの日核爆弾と一緒に吹き散って死んだ方がまだ数倍マシだとすら思う。
「ただいまー」
保険会社が十年前に用意した、団地ビルの一階角部屋の扉を開ける。経費削減のため随分クラシックな造りで、ビルは今時コンクリート製だった。鍵も指紋や赤外線認証ではなく本当の意味での��鍵��を使う。
「・・・おかえり」
寝室から鳥の巣頭の剛がのそのそと出てきた。今起きたといった顔だが、一張羅を来ている。
「あれ起きてんじゃん。どーしたの、どっか行くの？そんなおめかしして」
「昨日言ったろ。客と飯」
剛はチッと舌打ちしたかと思えば拳がひとつ入りそうなほど大きく口を開けて欠伸をした。欠伸の途中で「ったくねみぃんだよ・・・」と文句を垂れ、気休め程度に髪の毛を手ぐしでとかした。
「上客なの？」
「いーや、三流」
「じゃあとんじゃえばいいのに。そういうやつって、こっちに気がないと思わせてやれば必死になって追いかけてくるぜ。三流のくせにプライドだけはいっちょまえでさ」
「はは、たしかに」
剛は軽く笑うとくまの取れない目を擦り、「あ、明日は仕事行かないから」と掠れた声で呟いた。
「へえ。じゃーごはん久しぶりに作ろっかなー」
剛はにやりとして「じゃあな」と部屋を出て行った。ドアの隙間から、青い夕焼けが見えた。
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Mao(プロフ) - ふきさん» そちらも被災地だったのですね;< お互いがんばりましょう;< (2018年9月13日 2時) (
レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
ふき(プロフ) - 更新で、嬉しく飛んできたのですが！日常生活は、大丈夫なのでしょうか？お見舞申し上げます。御家族、皆様お怪我ありませんか？こちらは関西なので土砂災害が酷い地域もありますが、どうぞ無理せずお過ごし下さい。 (2018年9月10日 1時) (レス) id: c8a9c28ea5 (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - 亮真さん» ありがとうございます！キムチは放送後すぐ書きました笑 書かなければならない気がして...笑 (2018年9月10日 1時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
亮真 - 一気に読ませていただきました！めちゃくちゃ面白いです。個人的に。健くんのキムチのシーンが忘れられません笑楽しく読ませていただきました！これからも頑張ってください！ (2018年9月7日 22時) (レス) id: 01b213f1ed (このIDを非表示/違反報告)
Mao(プロフ) - ぴとで☆さん» 古い曲ですが名曲です！コメントありがとうございます。遅筆で申し訳ないです！ (2018年8月10日 1時) (レス) id: a30f7359e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Mao | 作成日時：2018年8月3日 21時
