50 ページ6
この人は、俺の才能を見つけた人だった。
そして、俺を上手にコントロールできる人だった。
小学校の先生に強く薦められて、幾つかの文章をコンクールに応募したら、その全部が賞をとった。
俺はただ、ばあちゃんが喜んでくれるといいな、と思っただけだけど、小学生のコンクールとはいえ幾つもの賞を一人の生徒が独占するというのは普通はないらしく、ちょっとした話題になった。
そんな時に突然現れ、俺をプロの文章書きとして売り込み、仕込んでいったのがこの人だった。
初めのうちは楽しくて堪らなかった。
自分の好きなことを誉められるのは単純に嬉しかったし、自分の存在価値をたくさんの人に認めて貰えているようで、俺は、これまでの人生の中で味わったことがなかった充実感が得られた気がしていた。
この人の言うことを聞いていれば何もかも上手くいくと、信じたかったのかもしれない。
「こうた」
…反らしていた目を合わせざるを得ない、声。
「また、私と一緒に世に出よう」
目を閉じると、瞼の裏にあの頃が甦る。
…この人は、俺に負荷をかけるのがとても上手だったと思う。
子どもの俺が、出来る精一杯の少し上のところまで追い込む、その匙加減が抜群に上手かった。
俺が子どもながらに大人と渡り合い、次々と作品を書き上げていけたのは、この人のお陰なんだろう。
でも、
その代償は大きかった。
……
「出ていけよ」
ゾッとするような、イノオの冷たい声が空気を斬った。
俺も、涼介も、中島さえも、全員がこの人の見えない圧に飲まれて身動きが出来ない中、イノオが三人の前に出た。
…まるで俺たちを守るように。
「やぶはお前を必要としていない。この家はお前を受け入れない」
少しの間の後、その人は肩を上げて両手を拡げた。
そして、
「やはり何か誤解があるようだね。話はまた今度にしよう」
そう言って、またあの笑みを顔に張り付けた。
197人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めめめ(プロフ) - 夏夢さん» 好きと言っていただけて嬉しい!私もかむちゃんワールド大好きです!ゆーと、あんなに素敵なのに私の手にかかると不憫だったり変態だったりほんと申し訳ない (2022年2月14日 15時) (レス) @page27 id: 1ec0dcf065 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - ああいるわーこういうタイプぅ…呟きながら読んでしまったゆーとさん😅も、ホント好きですめめめさまワールド💕💕 (2022年1月29日 22時) (レス) @page26 id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
めめめ(プロフ) - みるみるみるきーさん» ゆやさんの年齢!考えてなかったぁ笑!うーん、多分魔法がかかってる感じかな?笑 (2022年1月29日 18時) (レス) @page26 id: 1ec0dcf065 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - やだっ!なに?謎が深まってんじゃん!で、ゆやママは一体幾つの設定なの?? (2022年1月29日 16時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
めめめ(プロフ) - 夏夢さん» ふっふっふ何故でしょう (2022年1月27日 23時) (レス) id: 1ec0dcf065 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ