壁の穴から (ybin) 2

中島の混乱 2 ページ13

〈中島の混乱 2〉


「ときめきは嘘じゃない！」



「わああっ！」

突然、道に現れた光くんに軽く跳ねる俺。


「って、歌があるんだよね」


「…は？」

…びっくりした。

俺の心の声にリンクし過ぎ。



「いや、今の話、聞いててさ」

「え？」

聞いてたの？どこで？


「薮んちの玄関あたりで喋ってるのは、たいがい俺んち聞こえてるの」


あ、なるほど。



「『ときめきは嘘じゃない』って歌、男のアイドルの歌なんだけどね、その歌詞が今の涼介に送りたいなーってすごく思っちゃったんだな」


…相変わらず、唐突。

まあ、俺もそういうタイプではあるけど。



「『笑ってよ、君らしく♪』ってさ、涼介に歌ってあげたい」


「えーと…すみません、俺、その歌知らない」


「うーん、今ここで歌詞を全部出しちゃうとね、色々問題があるらしくて、でも、サビのとこ以外も全部、今の涼介に届けてあげたいなあ」


そうですね、歌詞を全部出しちゃうとダメなんですよね。
ルール、ルール。


「はじめは上手じゃなくても、思い付きでも、涼介はそれでも愛を持って書いてきたんだから、その愛は嘘じゃない」


…うーん、光くんのボキャブラリーにしてはとても不自然なこの台詞みたいな言葉は、多分、その歌からお借りしてるんでしょう。

「詳しくはCDをお聞き直しください」


光くん、誰に喋ってんの…。

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