抱えた闇は知っている Ｆirst,Story

17＊さようなら ページ21

［SIDE:A.T］


ついに、その日が来てしまった。

この家なら立ち去る日が。

立ち上がり階段を降りるとママがいた。

「朝ごはんはあっちで食べるのよ。

　もう車は停まってるから身支度したら出て。」

早いさようならなんだね。

髪の毛を整え、ピンクのスーツケースとkzの写真。

全部持った。

『さようなら。ありがとう。』

心の中で呟いた。

奈子はどうなるんだろう。

お兄ちゃん達になにかされないように
願うしかできないけれど。

玄関の扉を開けると黒い大きな車が停まっていた。

「彩ちゃんね。

　行きましょう。」

若い女性が私に笑った。

車に乗り、その女性が後ろの私を見たんだ。

「私は、元田由利。

　貴方の…。担当みたいなものよ。

　大変だったはわね。

　無茶苦茶されたんでしょう？

　お母さんの養子理由も全く、
　おかしな話だったわ。」

同情なんていらない。

わからないくせに。

「あの、私はどこへ？」

ずっと聞きたかったことを聞いてみた。

どこに連れて行かれるのか。

「言ってなかったと思うけど

　貴方の新しい家族は決まってるのよ。」

新しい…、家族？

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