19話 ページ20
いつものようにセキュリティカードの返却をしに来た毛利さんを対応しながら、私は小さく息をついた。中堂さんに感情的に怒鳴ってしまって以来、さすがにいつものように追い掛け回すような真似は控えていた。仕事上、接しなければいけないタイミングは山ほどあるので、避けたりはしてないが。上っ面だけのコミュニケーションをしていることに、少し疲れていた。
「どうかしましたか」
「え？」
「いつもと違って元気がない様でしたので」
至っていつも通り外面を作っていたつもりだったのだが、どうやら隠し通せてなかったらしい。目ざとく見抜いたらしい毛利さんが、柔らかい口調で問いかけてきた。
その優しさに思わず堪えてきた感情が溢れそうになったが、ぐっと堪える。毛利さんに泣きつくのはさすがに迷惑すぎる。
「ちょっとまあ、へこんでまして」
「話くらい、聞きますけど」
「いや、そんな悪いです。しょうもないことなので」
「そんなにあからさまに落ち込むくらいなんですから、小鳥遊さんにとってはしょうもなくないことなんでしょう」
「毛利さん…」
とても愛想がいいとはいえない第一印象に一歩引いてしまった初対面の頃が懐かしい。すっかり自分の中では“いい人”になってしまった毛利さんに、笑いさえ零れそうになる。私は毛利さんの好意に甘えて、「じゃあ」と口を開いた。
「一つ、お訊きしてもいいですか？」
「どうぞ」
「毛利さんっておいくつでしたっけ」
「39、ですけど」
「…私って、毛利さんから見て異性として意識できますか？女性として見れますか？」
「はい？」
真剣な表情で聞こうとしていた毛利さんが素っ頓狂な声を上げる。私はじっと毛利さんを見つめて身を乗り出した。
「お願いです！毛利さんの意見を参考にさせてください！」
「はあ。…まあ、別に小鳥遊さんは成人してますし、女性として見れますけれど…」
「私から恋愛感情を持たれたら満更じゃないですか？」
「何を聞いて…、いや、別に迷惑だとかは思わないですよ」
困惑しながらも毛利さんは真面目に答えてくれたようだった。決して、毛利さんと中堂さんを一緒にするわけではないけれど、歳が近い毛利さんがそう言ってくれるなら見えてくる希望がある。それくらい単純というか、バカにならないとこの恋はやってられないのだ。
「ありがとうございます！おかげで、元気出ました」
「そりゃ良かったです」
呆れながらも、ふっと笑った毛利さんに、ちょっときゅんとしたのは秘密だ。
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みーこ(プロフ) - アンナチュラル再熱して、読みにきました。素敵な作品をありがとうございます！更新お待ちしております。 (2022年5月30日 22時) (
レス) @page21 id: 71713ba9a2 (このIDを非表示/違反報告)
EL(プロフ) - 最高です。続き楽しみにしてます！ (2020年10月18日 21時) (レス) id: 7933e3d246 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - すごく面白かったです！アンナチュラルの小説がほとんど更新されない中で嬉しい！楽しみに待ってます！ (2020年8月27日 15時) (レス) id: 8dbc6350e1 (このIDを非表示/違反報告)
魚介(プロフ) - 更新待ってましたー！！ (2020年8月18日 22時) (レス) id: 80be786faf (このIDを非表示/違反報告)
伽耶 - わぁぁあ！更新待ってましたー！このお話すごい好きすぎて辛い (2020年8月18日 17時) (レス) id: 5ddf7785a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ことは | 作成日時：2020年8月12日 16時
