17話 ページ18
「聞いたわよ〜A」
「はい？」
いつものように事務仕事のついでにお茶菓子、今日は栗饅頭を持ってUDIラボのオフィスに訪れると、東海林さんがにやにやしながら私の肩を抱いてくる。
「木林さんと食事に行ったんだって？」
まあ、なんと話の早い…。その手の話が大好きな東海林さんを煙に巻くのは至難の業だ。どう切り抜けたものか、と頭を悩ませていると、三澄さんがべりっと東海林さんを引きはがしてくれる。
「あんまりプライベートなこと訊かなーい」
「なによう！ミコトだって気になるくせに」
「でもAちゃん困ってるじゃない」
「はは…」
正直助かります、三澄さん。今日はこのまま早めに撤退したほうがよさそうだ。所用だけさっさと済ませようと、近くの久部くんに「中堂さんは？」と尋ねる。
「中堂さん、まだ解剖室かもしれないです」
「解剖室か…」
今ここで待つのは東海林さんの餌食になる未来しか見えないし、探しに行くとしよう。また絡まれないうちにそそくさとオフィスを出ると、ちょうど廊下で中堂さんと鉢合わせた。
「あ、中堂さん」
私が呼び止めると、素直に足を止める中堂さん。仕事の用事だと分かっていると、幾分か素直に反応してくれる中堂さんかわいい、好き。
「この資料の貸し出し申請していましたよね？承認終わったので、どうぞ」
「ああ」
私の手元から資料を受け取った中堂さんは、ぱらぱらと中身を確認すると満足したように頷く。普段だったらこれで中堂さんはスタスタと行ってしまうのが常なのだが、何故か今日は私をじっと見下ろしていた。
雑談をしてくれるなら嬉しいことこの上ないが、あの中堂さんだ。困惑しつつもドキドキして中堂さんのリアクションを待っていると、中堂さんが小さく鼻で笑った。
「木林と出かけたらしいな」
「な、何故それを…」
「東海林が朝から騒いでた」
東海林さん！と心の中で非難の声を上げてしまう。中堂さんがこのような話題に食いつくのは意外だったが、せめてその気も何もないことだけは伝えておかなければ。
「あの、皆さんがご想像する感じではないので…本当に…。ちょっと仕事仲間として食事しただけで」
「別にいいんじゃねえのか」
「え？」
「俺なんかより、木林の方がよっぽどいい」
嘲笑うように言われたそれに、思わず固まってしまう。
「年齢も近いだろ。チャンスをわざわざ無駄にすることはない」
気が付けば私は、中堂さんを睨み上げていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 179人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みーこ(プロフ) - アンナチュラル再熱して、読みにきました。素敵な作品をありがとうございます！更新お待ちしております。 (2022年5月30日 22時) (
レス) @page21 id: 71713ba9a2 (このIDを非表示/違反報告)
EL(プロフ) - 最高です。続き楽しみにしてます！ (2020年10月18日 21時) (レス) id: 7933e3d246 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - すごく面白かったです！アンナチュラルの小説がほとんど更新されない中で嬉しい！楽しみに待ってます！ (2020年8月27日 15時) (レス) id: 8dbc6350e1 (このIDを非表示/違反報告)
魚介(プロフ) - 更新待ってましたー！！ (2020年8月18日 22時) (レス) id: 80be786faf (このIDを非表示/違反報告)
伽耶 - わぁぁあ！更新待ってましたー！このお話すごい好きすぎて辛い (2020年8月18日 17時) (レス) id: 5ddf7785a7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ことは | 作成日時：2020年8月12日 16時
