15話 ページ16
有言実行、私に告げた通りに定時近くになった頃合いで木林さんは車で迎えに来てくれた。さすがに社用車ではなかった。
本当に来た…と思いつつ、ぎこちない動きで助手席に乗り込む。男の人が運転する車に乗るなんて、父親以外では初めてだ。緊張を抑え込むように、私はシートベルトをぎゅっと握った。
連れられたのは、前から準備していたのか、と思うほどおしゃれで静かな店だった。なんだこれ、木林さんは女の子を落とす時にいつもこういう店を使うのか。ずるいにもほどがある。
席に着いて適当に飲み物を頼んでから、何を話したらいいのか分からず沈黙が落ちかけたところで、木林さんが口を開いた。
「緊張してます？」
「えっ！？…わ、分かりやすすぎましたか…すみません」
「いえ、少し意外だなと思っていただけですよ」
「へ、」
「普段の小鳥遊さんはいつもはきはきとしていらっしゃるので」
そりゃあ仕事ですから。と思ったが、確かに周りから見ればそうかもしれない。普段の私はやかましくてお調子者で中堂さん相手でもぶつかって行く破天荒女だ。多分、そう思われているはず。そんな私が男と二人で緊張、とか柄ではないように見えるだろう。中堂さん相手にあんななのに今更、とか。
「木林さん相手だし、正直言っていいですか」
「勿論」
「…お、とこの人、慣れてないんです」
木林さんはバカにするような人でもないと分かっているので素直に吐露すると、木林さんは少し驚いたように目を瞬かせた。
「中堂さんは…、」
「中堂さん相手でも二人きりだったら緊張します」
「…なるほど」
納得したように頷く木林さん。よかった、引いたりとかはされていないようだ。白状したおかげが、僅かに緊張も解けてきたように思う。木林さんに、へへと情けない笑顔を向けると、にこりと微笑み返された。
「かわいらしいですね、とても」
「……、！？」
聞き間違いかと思い、反射的に木林さんを二度見したが鉄壁の笑顔は崩れることなく私を見つめる。いま、いまかわいいって。テンパった私はとにかく今の空気をどうにかしないと、と裏返った声で「あの！」と切り出す。
「ご、ご要件は？」
「要件？」
「何かお話があって連れてこられたのかなって…」
「いえ、特には。私が小鳥遊さんとお食事をしたいと、個人的に思った次第です」
淡々と信じ難い事実を返されて、私の頭はいよいよショート寸前だった。
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みーこ(プロフ) - アンナチュラル再熱して、読みにきました。素敵な作品をありがとうございます！更新お待ちしております。 (2022年5月30日 22時) (
レス) @page21 id: 71713ba9a2 (このIDを非表示/違反報告)
EL(プロフ) - 最高です。続き楽しみにしてます！ (2020年10月18日 21時) (レス) id: 7933e3d246 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - すごく面白かったです！アンナチュラルの小説がほとんど更新されない中で嬉しい！楽しみに待ってます！ (2020年8月27日 15時) (レス) id: 8dbc6350e1 (このIDを非表示/違反報告)
魚介(プロフ) - 更新待ってましたー！！ (2020年8月18日 22時) (レス) id: 80be786faf (このIDを非表示/違反報告)
伽耶 - わぁぁあ！更新待ってましたー！このお話すごい好きすぎて辛い (2020年8月18日 17時) (レス) id: 5ddf7785a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ことは | 作成日時：2020年8月12日 16時
