嘘276 ページ16
「ある意味で死ぬかと思った…」
「まあ骨折治ったんだから良かったんじゃね？」
「じゃあ今から兄さんも骨折する？」
「却下」
この野郎、と悪態をついて廊下を歩く。
すでによろける必要もない足に、怪我ひとつない。そのかわり精神的にとても苦痛だったけれど。コウさんの晴の炎による治療法怖すぎて泣いた。
兄さんは私の横を歩き、その横顔を見て思い出す。
「そういえば京都連れてってくれるんだっけ？」
「…お前なあ。 まあAが行きてーならいいけど」
「うーん。 そうだなあ、そうでもないかも」
「おい」
今すぐではないし。それにあの言葉のおかげでどれだけ救われたか。多分兄さんは知らないんだろう。そう簡単に変われはしないけどさ、確かに私は少しだけ変われたから。ユニを救えたから。
ノア達はあの後、殺されることはないらしい。綱吉の頼みもあって、流石にボンゴレ10代目の言葉を無視はできないだろうって。ヴァリアー全員不服そうだったけど。ノア達の今後は私達が過去に帰って、本来この時代にいるはずの私達が戻ってから方針を決めるらしい。とりあえず今は保留、ってことだ。
帰る前に一度話したかったけど。まあ仕方ないか。それも未来の私に任せよう。
「…というか未来ではちゃんと兄さんが結婚してるか心配になってきた、私」
「ばっ、お前そんなこと考えてたのかよ！？」
「だってさー。兄さんモテるわりにどんな子がタイプ、とか全然教えてくれないじゃん。流石に無理なタイプは分かるけど」
う、とたじろぐ兄さん。それをからかうように言っていればお前はどうなんだよと返される。
結婚、結婚かあ…。
「考えたことない」
だいたい、元々男が嫌いなわけだしさ。結婚なんてもってのほかって感じで。
まず脳内に浮かんだことのない文字だ。
「独身かもね、1人寂しく」
「……いや、俺お前については色々心配してねーわ」
「え？」
「なんでもない」
ぽん、と頭に手を置かれて撫でられる。
一体どういうことなのだろう？
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作者名：白黒箱 | 作成日時：2018年9月7日 16時
