嘘262 ページ2
「そうしたら、今よりずっと楽だ。
殺してよ、こんなことなら。もう生きたくないよ、私っ…。
ねぇっ……兄さんっ」
ずっと、嫌だった。
私が周りを不幸にしてしまうことが。幸せになんてできやしない。
私のせいじゃないって、兄さんにそう言わせてしまう自分が嫌で仕方なかった。
もし私の居ない世界だったら、兄さんは普通に苦しまなくて済んだし。
私のせいでユニを泣かせることもなかった。
誰も、私のせいで死ななかったかもしれない。
涙が頬を伝う。
「……なぁ、明日の朝ごはん何が良い？」
「は……？」
「良いから、なんでも言ってみろよ」
突然の言葉に顔を上げる。兄さんは涙を流しながらも微笑んでいた。
「……久しぶりに洋食がいいな。ここに来てから、和食しか食べてないから」
「そうか、じゃあ旅行するならどこがいい？」
「……温泉、紅葉の綺麗なところ」
「はは、京都あたりか？」
「……」
なんなのだろう、本当に。
頭でも可笑しくなってしまったのだろうか。兄さんは笑うと、私を見て名前を呼んだ。
「俺さ、生きてく理由に大層な理由なんていらねーと思う。
飯がうまいとか、音楽を聴きたいからだとかそういう簡単な理由で良いんだよ。
明日の飯、お前の要望通り作ってやるし行きたいところ連れてってやる。
過去に戻りたいなら、明日楽しいことを作れば良いんだ。
なぁ、もう少しだけ生きてくれよ。お前が居なきゃ笑えない奴も、いるから」
「そうだよ、A」
「コウさん…」
兄さんの手に、コウさんの手が重なる。
コウさんはいつものように、笑っていた。
「また３人で笑おう。 僕の我儘に付き合ってくれる弟子なんてこの世界にしかいないんでしょ？
もっと付き合ってくれないと、寂しいよ」
「そうっすよ、勝手に救っておいて置いてくなんて酷いっす！！
Aさん顔いいんすからうちと一緒にオシャレしましょ」
「……望結」
コウさんの手の上に、望結の手が重なる。にっかりと、明るい笑顔は昔から変わらない。
その敬語、外して良いって言ったのに。
「俺もまだAさんの元に居たいです。Aさんに教えてもらった金平ごぼう、まだ習得してないからわからないところ教えてくださいよ」
「紹巴」
紹巴の手が、望結の上に重なる。
金平ごぼうって何年前の話持ち出してるの。
「……A、僕…みんないるここが好き。
A、救ってくれた……唐辛子牛乳、一緒に飲もう？」
「ニアン…」
紹巴の手の上にニアンの手。
そういえば、一度も飲んだことない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白黒箱 | 作成日時：2018年9月7日 16時
