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ついでにいい酒もあると伝えたら、飲みたいわってまた笑って言うから、酒と肉を持って、北山さんの家で料理をすることになった。


「送るって言ったのに悪りぃな。帰りのタクシー代は出すから」
「それは、全然大丈夫ですけど」
「けど?」
「むしろ、いいんですか?」
「何が?」
「彼女さんとか、いないんですか?」
「彼女かー、しばらくいねぇわ」


この人に彼女がいないことが信じられないけど、確かに彼女に構ってられないくらい忙しいことも知っている。
明日だって、多分久しぶりの土曜休みだ。
エースと呼ばれるだけあって、抱えているクライアントは、わたしと比べたら失礼なくらい多い。
そのクライアントの都合で、土日祝日関係なく働いている。
それなのに、今日はわたしの仕事を手伝ってくれた。
また感謝の気持ちで胸がいっぱいになる。




「ステーキ用だし、焼きでいいですよね?」
「もちろん!あー、まじで腹減ったわー」
「飲んでていいですよ」


じゃあお言葉に甘えて、と言って北山さんはリビングで飲み始めたので、わたしはキッチンを借りて調理を開始する。
肉は1人分しかなかったから、帰りにコンビニに寄って、簡単な食材を買った。
わたしが出しますって言ったのに、北山さんが払ってくれた。
彼女がいないって言われて、良かったと思った。いるって言われたら、立ち直れなかったかもしれない。

わたしが焼いたステーキと、コンビニで買ったもので作ったサラダとスープを、北山さんは美味しいと何度も言いながら食べてくれた。
肉に関しては素材の味だろうけど、サラダとスープまで褒めてくれたんだから、自惚れてもいいのかもしれない。

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作者名:なー | 作成日時:2021年10月2日 15時

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