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「行こ」
ミツの声に目を開ける。腕を下ろした時、合わせた自分の掌に、とても力が入っていたことに気付いて驚いた。必死すぎる。そして、それはとても滑稽だった。
少し先を歩くミツの背中。少し前まで、わたしの手は、あの背中に抱きついて、ミツの手は、わたしの背中をちゃんと抱いてくれていた。いま、それをしたらどうなるんだろう。
わたしの願い、ちゃんと言葉にしたら、伝えたら、神様じゃなくて、ミツは叶えてくれるのだろうか。このまま2人でどこかに消えてしまいたい。わたしは、ミツと付き合いだした時から、違う、ミツをすきになった時から、ずっとそう願っている。ミツの周りにいる女はわたしだけでいいし、ミツが話しかけるのも、ミツが触るのも、ミツが見るのも、わたしだけがいい。わたしだけじゃないと嫌だ。ミツを独占していたいという心からのわたしの願い。ずっとずっと願い続けてきたのに、ついに叶わなかった。
他にすきなひとができた、と伝えられた。数時間前。わたしは一気にどうしたらいいのかわからなくなって、俯いて黙った。視界の端でミツは困ったような顔をしていたけど、溜息をひとつ吐いて、それ以上の言葉を言わなかった。どうしよう、どうすればいいんだろうと逡巡したけれど、頭が重くて、何も思い浮かばなかった。ミツがわたしに興味を失くしてきていることに気付いていたのに、どうしたらいいのかわからなかったこの数ヶ月と同じように。
何も言わずに対峙していた数時間前のわたしとミツを思う。あの時、別の言葉を伝えていれば、何かが変わったんだろうか。いまこの瞬間を迎えないための正解の言葉はなんだったんだろう。だけど、そんなのはただの後悔で、わたしがいまあの時の正解を導き出せたとしてもそれは夢物語だ。現実のわたしは、やっとのことで、最後にどこか一緒に出掛けたい、と言葉を発し、じゃあ初詣に行こう、とミツは笑って、いまわたし達はここにいる。もう二度と帰ってこない過去と、膝から崩れ落ちてしまいそうなこの現実。
わたしは何を間違えたのだろう、何をどうしたらこうならなかったんだろう、かみさま、教えて。どうすればわたしはのミツの傍にずっといられたの。どうすればミツはわたしをずっとすきでいてくれたの。どうすればこんなことにならずに済んだ。
さっきのミツの願いはなんだろう。わたしはその願いの中に存在するのだろうか。ミツの中のわたしは、いま、どんな存在なんだろう。
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作者名:なー | 作成日時:2021年10月2日 15時