【ｲﾅｲﾚ】隣の引きこもり少女 (ページ2)

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歩くこと早10分。

ようやく目的地にたどり着いた。

そこはごく普通の家で、玄関前には小さな花壇がある。

家の外観と合わせた色合いの門にはインターホンと表札が。

『長谷』

はせ、と小さくリピートするとチャイムを軽く押す。

しばらくすると、玄関からエプロン姿の女性が出てきた。

多分、長谷の母親だろう。

「あら、雷門の制服ってことは…Aちゃんのお客さんかしら？」

「はい、先生から預かってきたんで持ってきました」

約一月分の配布物が入った封筒を手渡す。

「あら～助かるわ。ちょっと待っててね、Aちゃんにもちゃんとお礼言ってもらわなくちゃね！」

「いやえっと、頼まれて来ただけなんでそこまでしてもらわなくても…」

断ろうとすると、既に呼びにかかっていた。

「Aちゃーん！ちょっと降りてらっしゃい」

と、呼んで一分。

なかなか来ないことを理由に帰らせてもらおうとするとー

ﾄﾞﾀｯ

と何かが落ちたような音が。

母親は「また階段から落ちたのかしら…」と慣れた素振りだが…またって何だまたって。

結局帰り損ねて待っていると、ドアの陰から真っ白な手が覗き、次いで顔が半分覗く。

「誰です、か…？」

長谷さんすいません。

一瞬幽霊と思ってしまいました。

「あっ、俺は一之瀬一哉。よろしく、長谷さん」

多少罪悪感もあり簡潔に自己紹介すると、蚊の鳴くような声で

「あ…りがと…えっ、と、私、長谷A…」

と言い、そこまで言い終わると手以外はドアに隠れてしまった。

地味に怖いんで勘弁してくれ…。

「あの子人見知りと引きこもりだからああなっちゃうのよ。困ったものね～」

もっとも、この親が気にしていないようなので言わないが。

その時、完全に帰るタイミングを逃して途方に暮れていた俺の背中に軽いものが当たった。

それは地面に落ちてカサリ、と音を立てる。

「…紙飛行機？」

(それにしては折り方が…)

取り合えず開いてみると中に何か書いてあり、その内容に目を通す。

『来てくれて嬉しかった。でも、お話できなくて、残念。だから、あの、また来てね…？』

ふっと笑みが零れた。

面倒だと思ったことでもちゃんとやりさえすれば、案外いいことが待ってるものだ。

「えーと…長谷さんのお母さん？でいいですか？」

「あら、何かしら？」

「長谷さんに『また来る』って伝えてもらってもいいですか？」

見えた訳ではないが、ドアの向こうで目がキラキラと輝いている気がした。