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帰宅すると私たちの自室に重い紙袋をドサドサと落とすように荷物を置く。
「ただいまーマッカチンー! 今日の買い物楽しかったね」
「まぁねーこんなに買い物することになるとは思わなかったけど」
私たちはスーツやコート以外に何故かマフラーやシューズやら上から下までの一式を購入したように思える。
勇利、驚くだろうなと彼の驚く姿を想像したら笑えてきた。
「それにしてもAの服装はラフすぎないか?」
「ええー?そう? 一応子供っぽく見えないようにと服買ったんだけど遊びすぎたかな?」
深いグレーのストライプが入ったスーツはまずいだろうか?
しかし、ヴィクトルと合わせて黒一色ってのも就活生っぽく見えたらダサいし、なにより着方によって喪服っぽく見えると思うと、今回の大会は勇利のお葬式感が出て縁起が悪いと言ったところではない。
「じゃあ今度はヴィクトルが私をコーディネートしてよ」
「ええ?いいの?」
そんなに嬉しいことなのか?それとも買い物時間が短くなることが喜ばしいのかどちらかは分からないが、彼は嬉しそうに笑っている。
私は変なのとヴィクトルから貰ったコートを外にかけるために紙袋を開けて出す。
「可愛いー」
「女の子ってなんでもカワイイっていうよね」
「そういうイキモノなんだよ」
コートを改めてきちんと見たのだがこのカタチはトレンチコートだ。
トレンチコートといえばコートの定番なのだけれど、このコートは細かい部分までよく作り込まれていて非常に可愛らしい。
そして作り込まれているイコール値段も高いという現実が体にのしかかる。
私もヴィクトルにコート代を出世払いしようと心に誓ってコートを吊るした。
「ヴィクトル、私頑張るね」
衣装を作り終えた私が何を頑張るのか、という話なのだが。
とりあえずヤル気が今回の買い物で出たので言って置くと「……俺も頑張るよ」と手袋をつけて嬉しそうにしているヴィクトルがそこには居た。
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作者名:かなぁ | 作成日時:2016年11月25日 14時