【ユーリ!!!】野球女と銀盤の王子2 (ページ20)

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道頓堀なんかにきて何が楽しいんだろう。

　夕焼けに染まる道頓堀川に掛かる橋に多くの外国人観光客と居酒屋の客引きが有象無象がいるカオスな風景。

　ヴィクトルは嬉しそうに例の看板と自分を私に携帯を持たせて写真を撮っているし、勇利も勇利で楽しいのか写真を撮っている。

「楽しいね！来てよかった～」

　しかし、こう喜びを言葉と笑顔で表現してくれると嬉しいものがある。

「ふふ、本当に？それはよかった」

　そう言ってると勇利がキョロキョロする。

「A、ここってお土産屋とかない？」

　ああ、家族とかにお土産買って帰るのか。

「じゃあ橋降りたとこにあるよ」

　行こうかと言うと横にいたヴィクトルの姿が忽然と消えてしまった。

「あ、ちょっ、ヴィクトルが居ない！」

「ええ？！」

　どうしよう、どうしようと辺を見渡すと銀髪が人混みに浮いていた。

　私は人混みをズンズンとかき分け声を掛ける。

「ヴィクトル！ちょっと勝手にどこかいかないでよー！心配するでしょ？」

　写真を撮るに夢中になって人混みに流されていたのに気付かなかった彼はスマホをポケットに収めて謝る。

「ああ、ごめんごめん。楽しくて」

　笑顔の彼にキツく叱れない私は溜め息が出る。

「もーホント気をつけてね。勇利がお土産買いたいみたいだから行こう」

　ヴィクトルの手首を掴んで勇利のそばまで行く。

「ごめんね、勇利！お土産買いに行こうか！」

　勇利はその場できちんと待っていてくれて本当に助かる。

　全く、ロシアから来た自由人とは違うと嫌味を言いそうになるのをこらえてヴィクトルを見るとポツリと彼に何かを呟かれる。

「手……」

　そういえば掴みっぱなしだった。

　悪いことをしたと手首を離せば彼の方から私の手を握られる。

「……俺のこと離さないで手を繋いでくれないとどこかに行くかも」

　笑って言うヴィクトルを見て私と勇利は呆れた。

　イタリア人顔負けのレディに対するお世辞ありがとう。

「……分かった。じゃあヴィクトル、お土産買って帰ろうね～」

　子ども扱いする台詞を言ったのが相手にも通じたのか子どもと手を繋ぐ感覚で手を繋がないで欲しいと笑われた。

　私のことは子ども扱いするクセにと思いながらも、彼の私より大きな手を握りかえせば、それに答えるように握り返してくれる。

　やっぱり、私のことを子ども扱いしてるじゃん。